ラグビーW杯開催立候補地、発表!釜石での開催はあるか? (2ページ目)

  • 松瀬 学●文・写真 text & photo by Matsuse Manabu

 嶋津事務総長はこう、言葉を足す。「北は北海道から南は九州まで、全国的に非常にバランスのとれた申請をしていただいた。全国で盛り上げて、国民全員がラグビーを楽しめると信じています」と。
 
 特記事項は、被災地の東北から岩手県・釜石市と仙台市の2つがあったこと、ラグビー熱の高い九州から4カ所もの地域が手を挙げたことである。関東は2カ所だけで、北陸エリア、中国、四国エリアからは立候補都市が出なかった。
 
 まだスタジアムが完成していないのは、岩手県・釜石市と東京都だけである。2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設は間違いなかろう。かたや岩手県・釜石市は目下、1万5千人収容のスタジアムを計画している。
 
 開催地選定の最大のポイントは、この「ラグビータウン」といわれる釜石市が選ばれるがどうかである。嶋津事務総長は被災地のチャレンジを歓迎し、釜石市と仙台市の相互の補完作用に期待している。

「やはり被災地の復興の状況を世界に示す絶好のチャンスとなります。選定にあたっては、先入観を持たれないようにしてもらいたいが、仙台市と釜石市はそれぞれ補完できる立地関係にある。両市が同じブロックの試合をやるということもあるし、その交通機関、宿泊、観戦客の観光旅行などのホスピタリティもお互い協力できる、いろんな意味で連携プレーも必要なことだと思います」

 気になるのは、仙台市が、①財政負担の軽減 ②好カードの要望 ③Jリーグとの日程調整――など6項目の条件を付けたことである。だが、嶋津事務総長は「条件は、要望、課題だと受け止めている」と話す。他都市も似たような要望を出しているようで、「開催団体と我々で努力すれば、乗り越えられる課題もあります」と柔軟な姿勢を示している。
 
 選定作業は、早ければ12月にも国際ラグビーボード(IRB)側のラグビー・ワールドカップ・リミテッド(RWCL)と組織委員会による現地調査が始まり、来年3月までに開催地が決定される。それぞれのスタジアムの規模や設備などの諸条件、交通機関、宿泊施設などのインフラ面だけでなく、マーケティングを含めた収支計画、大会後のスタジアム活用、開催理念、W杯を通したまちづくりなどがチェックされることになる。
 
 インフラ面の条件では苦しい人口3万7千人の釜石市の同市スポーツ推進課ワールドカップ誘致推進室の増田久士さんは「こういう田舎のまちが、ワールドカップを生かして、地域の活性化にどうつなげていくのか。いまの日本の(一極集中の)課題解消に貢献することもできるかもしれない」と訴える。
 
 要は、大会組織委がW杯の目的をどこにおくのかだろう。大会収支だけにこだわるのか、あるいはラグビーの普及・発展、ラグビー文化の醸成、被災地復興を含めた国作りまで視野においているのか、である。
 
 そう考えると、開催地の予定数にこだわる必要はない。来年のW杯イングランド大会では13会場で試合が行なわれる。いっそのこと、W杯日本大会では、14カ所すべてでW杯の試合を開催してもいいのではないか。

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