【ラグビー】スーパーラグビー参入が、日本代表に革命を起こす (2ページ目)

  • 松瀬 学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤 龍太郎●写真photo by Saito Ryutaro

 現在、日本代表の田中史朗、堀江翔太(ともにパナソニック)、マレ・サウ(ヤマハ発動機)がSRに挑戦中で、彼らの成長をみれば、いかにSRでのプレーが有意義かわかる。来シーズンからは、日本代表のリーチ・マイケル主将(東芝)、ツイ・ヘンドリック(サントリー)もSRにチャレンジする。

 日本の強化にとってレベルの高い試合の増加は不可欠と、2016年からのSR参入を目指し、シンガポールと1枠を争った結果、2019年W杯を開く将来性、ラグビー人口の多さ、ラグビー文化の浸透ぶりなどから、新規参入の「第一候補」となった。いわば「内定」。SRを運営する南半球3カ国協会(SANZAR)と最終調整を行い、参加契約書の調印を経て、今月中には決定される見通しだ。

 日本は、東京を拠点に代表クラスのチームを編成する。日本協会の矢部達三専務理事は参入目的について、「日本代表と近いチームで戦っていくわけだから、代表の強化が一番。強い相手とどんどんやっていかないと、今以上の強化は望めないと思う」と説明する。財政面などの参入条件については、「ほぼクリアした」という。

 日本のほかには、アルゼンチンと南アフリカのチームが加わることになる。日本戦の試合の一部をシンガポールで開催することにもなりそうだが、定期的な高いレベルでの試合数増加は日本代表の強化だけでなく、新たなファン獲得にもつながるだろう。

 参入決定となれば、SRスタートまで、あと1年半しかない。最大の課題は、選手の待遇か。現在のSRでプレーする選手はプロ選手で、例えば、NZのカンタベリー州協会らの名門クルセダーズなど、現在のSRのチームの選手は所属協会が報酬を払っている。が、日本の場合は、トップリーグで活躍する選手の多くが企業の社員となっている。

 日本協会が報酬を払って、選手をリーグ期間だけ拘束することができるのか。リーチ主将も「高いレベルでの試合は学ぶことが多い」とSR参入を喜ぶ。一方で「でも、会社との関係が難しくなる選手も出てくると思う」と語る。

 課題はこのほか、国内スケジュールの見直しである。2015年は9、10月にW杯(英国イングランド)が開催され、11月には7人制のリオデジャネイロ五輪アジア予選が行なわれる可能性が高い。16年3月にSRが開幕するとしたら、トップリーグの開催期間は2、3カ月に短縮しなければいけない(今年は8月下旬から来年2月まで開催)。

 すると、日本選手権はどうするのか。また、大学選手権の日程も無関係ではあるまい。この際、懸案の課題といわれている大学世代の強化のありようも検討したらどうだろう。

 当然、日本ラグビーの体力(財政力、マンパワー、マネジメント力...)も強化されなければいけない。中長期の戦略強化、情報の共有・公開の促進も期待される。変化はずばり、チャンスである。

 日本のSR参入は僥倖(ぎょうこう)である。ポイントは、トップ強化と普及、人気アップをどう効果的に連動させていくのか。日本ラグビーの革命がはじまる。

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