【ラグビー】トップリーグ開幕! 指揮官も世界水準へ

  • 松瀬 学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 高見博樹(T&t)●写真 photo by Takami Hiroki(T&t)

 王者が勝ち続けることは難しい。どうしても勝利への執着で後手を踏む。それがスクラム、モールの結束、接点での二人目の寄り、レッグ・ドライブ(足のかき)になって表れた。SR組合流から3週間。まだチームの組織的な攻防にはほど遠く、持ち前の防御からの切り返しもトライにはつながらなかった。

「どのキャンペーン(リーグ)もチャレンジです」とディーンズ新監督は言った。「そのチャレンジに私はエキサイトしている。きょうは後半、プレッシャーをかけることができず、逆に相手にかけられて、ペナルティーを犯し、ディシプリン(規律)を守ることができなかった」

 ディーンズ新監督は54歳、ニュージーランド出身ながらオーストラリア代表監督を務め、SRではクルセダーズを常勝チームに育て上げた名将である。3年ほど前からパナソニックに関わっており、日本選手の特徴、日本のラグビー文化もある程度分かっている。どんな名将でも日本選手のメンタリティを理解できないと成功はおぼつかないだろう。

 パナソニックの飯島均部長の言葉を借りると、新監督は「哲学者」だそうだ。一流コーチの要素として、指導方法はともかく、「優れた理論」と「人をひきつける魅力」の2つがある。ディーンズ新監督は、その両方に長(た)けた稀有な人物との評が高い。同じ歳のエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)とは持ち味がちょっと違う。チームの成長を個人の判断におき、動きの中での状況判断に磨きをかけようとしている。

 チーム強化のベースは、選手の人間的成長にある。経験豊富なディーンズ新監督ならば、いろいろなストーリーを考えているはずである。全勝優勝が理想ではあるが、時には負け、時には失敗を犯しながら、より成長を促す場合もあろう。ディーンズ新監督は柔和な笑顔を浮かべながら漏らした。

「この敗戦もチームのステップアップにつながると思う。ひとつひとつがチャレンジ。シーズンが深まるにつれて、もっともっとステップアップしていきたい」
 
 現役時はカリスマ主将であり、今年BKコーチから昇格した東芝の冨岡HCは相変わらず謙虚である。「ロビーさんを尊敬しています」と言った。

「経験値、場数は比べものになりません。僕も選手になって、彼に指導してもらいたいくらいです。エディーさん(ジョーンズHC)をはじめ、日本に国際的ないいコーチがどんどん入っていますので、それはすごく喜ばしいことです」

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