大学選手権。5連覇の帝京大を支える最強のラグビー文化 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu photo by AFLO SPORT

 今季、スクラムでは早大にやられていた。しかも相手3番、主将の垣永真之介の後手を踏めば、早大に勢いを与えることになってしまう。

「スクラムで相手をつぶしてやろうと言い合っていました」と、坂手が"してやったり"の表情を浮かべる。

「これまでは(スクラムの)ヒットの入りで受けていました。でも今日はいいヒットで組めた。しっかりと自分たちのカタチをつくり、コントロールできました」

 さらにはブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)である。FWの平均体重は早大99kgに対し、帝京大は106kg。でかくて強くて速い選手が、強靱な体と基本に忠実なプレーで圧倒した。

 根気強い仕込みと高い意識のたまものだろう、寄りのスピードとパワー、判断で相手を上回った。帝京大NO8の李聖彰(り・そんちゃん)が説明する。

「絶対、受けずに前にいくことを心掛けました。フィジカルで自信を持っているので、まず1対1でしっかり踏み込んで前に出る。ふたり目は低く激しく相手をクリーン・アウトする。寄りが遅ければ、ターンオーバーを狙っていこうと」

 FWが前に出れば、大型バックスも勢いづく。胸囲110cmの主将・中村だけでなく、1年生SOの松田力也が自在に走れば、183cmのCTB牧田亘がハイパントを好捕した。見事な判断と度胸、ジャンプ力、これにはしびれた。WTB磯田泰成の快足も冴えた。

 連続トライの松田が笑顔で振り返る。

「亮さん(中村)がマークされているのがわかったので、やるのは自分かなと。チャンスがあれば、勝負に出ました。(トライは)無我夢中で走りました」

『帝京の時代』である。これで自分たちが持つ記録をさらに伸ばして、5連覇とした。

 毎年、メンバーが大幅に変わる学生スポーツでは偉業といってよい。なぜ、と聞けば、岩出監督は「精神的な成長だと思います」と答えた。

「どんな選手にも、スタート時には、1年間、一歩一歩積み上げていこうと言います。誠実に、根気よく。お互いの信頼をつくっていこう。実力を高めていこうと」

 上級生の姿勢に下級生が学び、ひたむきにラグビーに取り組む。規律も高い。それが伝統となり、相乗効果が生まれていく。優れた素材が全国から集まり、選手層は厚く、部内競争も激しさを増している。

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