【ラグビー】NZに完敗も、ジャパンが継続すべき「日本流」とは?

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu

 ノーサイド。序盤は健闘しながらも、結局6-54の完敗である。福岡がうなだれる。

「残念です。最後の最後、あれだけつないで取り切れなかったのは、周りに申し訳ありません。フィジカルの部分も、経験の部分も、まだまだ足りないと思います」

 いくらNZが世界王者とはいえ、主力はNO8のマコウ主将とSOダン・カーターのふたりだけだった。相手は若手主体の編成だったのだから、ジャパンの勝機は決してゼロではなかった。しかし、ピンチ、チャンスでの動きの差が歴然だった。

 とくに彼我の違いが出たのは、ミス発生時のリアクションである。例えば、NZに献上した最初の2本のトライ。いずれもNO8ホラニのノックオンからだったが、ジャパンのカバーリングは薄かった。

「自分たちでミスして自分たちの首を絞めている」と大野は嘆く。「ミスしても、それをカバーする余裕がない。逆にNZはイージーミスをしても、ボールをトライラインまで届かせてくれない」 

 トライとは、チームの連係で相手を崩し、個人の力でフィニッシュするものである。どちらも力不足だったのだろう。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)もふたり目が遅かった。勝負どころの嗅覚はハイレベルの試合で磨いていくしかあるまい。

 過去、NZには4戦4敗だった。W杯では、1995年に17-145と屈辱的な大敗を喫し、2011年にも7-83とやられていた。日本代表はこの2年、エディー・ジョーンズヘッドコーチの元、『ジャパン・ウェイ』(日本流)を追求してきた。

「日本流」とは、簡単にいえば「スピード」と「低さ」、「精度」。シェイプ(攻撃の形)を重ねて相手の防御網を崩し、トライを奪うことである。

「ジャパン・ウェイとは?」と聞けば、大野はこう言った。「愚直ですかね」。

 確かにスクラムとラインアウトのセットプレイは成長し、6月にはウェールズから金星を挙げた。だが、ジャパンの生命線であるプレイの精度に関しては、この日、NZの激しい重圧にハンドリングミスを繰り返した。約束事のシェイプの配置も雑になった。

 孤軍奮闘したSH田中史朗はこう嘆く。「意識の問題です。もっとコミュニケーションをとってやれば、トライの可能性はもっと膨らんだと思います」と。

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