【ラグビー】打倒・オールブラックスへ。ジャパンが6月から立てた綿密な計画 (2ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 そして6月まで行なわれたツアー最終日のミーティングで、日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、このハカの映像を選手たちに見せた。11月に行なわれる大一番に向けて免疫をつけておくのが狙いで、夏から秋にかけて3回開かれた短期のキャンプでもハカの映像がミーティング開始の合図となった。

 メディアには、「すべてはハカから始まります。ハカのあと、我々が何をするか、楽しみにしていてください」と言うようになり、「この時期に大敗すれば、ラグビー人気復活に水を差すのでは?」という質問を受けると、「なぜ、そんな考えをするのですか。私は勝つことしか考えていません!」と一気にまくし立てた。

 ジョーンズHC率いる日本代表は、「世界一のフィットネスと、世界一のアタッキングラグビー」を目指している。豊富な運動量を支えに、ボールの供給源であるスクラムハーフと司令塔のスタンドオフの両脇に複数のランナーを置く「シェイプ(型)」を形成し、次々と連続攻撃を繰り出すのだ。

 そして今年7月に長野県菅平で行なわれた合宿でジョーンズHCは、選手をポジションごとにいくつかのグループに分け、オールブラックスの分析レポートを提出させた。普段、相手チームの分析は専門スタッフ主導で行なうが、ジョーンズHCは選手たちに当事者意識を植え付けたかった。

 秋の合宿で徹底したのは、「相手のバックスにタックルをさせる」ということだった。オールブラックスはフォワードに比べて、バックスのタックル成功率が低いと分析。そこで、相手のフォワードをもともとの立ち位置に釘付けにし、バックスへの援護をさせづらくするというのが狙いだ。

 その一環として、スクラムハーフの左右にフォワードの選手を固める「9シェイプ」に取り組んでいる。本来ならスクラムハーフからボールを受け取ったフォワードがそのまま相手にぶち当たるところ、パスで外に回す。スクラムハーフの日和佐篤(ひわさ・あつし)は次のように説明する。

「バックス対バックスで勝負するため、相手フォワードを(本来の)位置にストップさせる。そのためには(ジャパンのフォワードの)パスが必要じゃないかと」

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