【ラグビー】花園開幕。山沢拓也(深谷高)を筆頭に将来のジャパンを担う逸材たち (2ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 だが本人は、周りからの高い評価にいつも首をかしげる。高い向上心を持ち、それ以上に人前でしゃべるのが苦手だからか、景気のいい談話を求められても「不安ばっかりです」「今日もダメでした」と、小声で繰り返す。「将来の目標は?」と、2019年のワールドカップ日本大会を意識したこんな質問にも、「特にないです」と即答するほどである。山沢は言う。

「目の前の1戦、1戦を大切にするだけです」

 その山沢率いる深谷が順当に勝ち進めば、1月1日、3回戦で全国優勝4回の伏見工業高校(京都)とぶつかる可能性が高い。

 そして、その伏見工のキャプテンを務めるのが松田力也(3年/180センチ、82キロ)。チーム事情により、スタンドオフ、センター、フルバックをこなす技巧派だ。山沢と同じく高校ジャパンとジュニア・ジャパンのメンバーでもある松田は、6月にアメリカで開催された「ジュニア・ワールドラグビートロフィー」にも20歳以下日本代表で唯一の高校生として出場した。

「自分はそんなに大きい選手じゃないので、低さが武器になる。あと、(相手の真正面から自分の立ち居地を)ずらして裏に抜ける、というプレイが強みになるし、大事になると思います。できうる最大限のことを積み重ねて、毎日を大事にしていきたいです」

 攻めては相手の死角からスペースに飛び出してボールをもらい、カバーに来るディフェンスを引き付けつつ仲間にパスを放つ。守っては低く鋭いタックルでチームを助ける。山沢との直接対決になれば、多くの関係者の視線を集めそうだ。

 また、大会4連覇を目指す東福岡高校(福岡)にも、ジュニア・ジャパンのメンバーがいる。ロックの牧野内翔馬(まきのうち・しょうま/3年/189センチ、97キロ)だ。ロックとしてはやや小柄な部類に入るが、ピンチを先回りする嗅覚と、ルーズボールへの素早い反応が評価されている。

 ジョーンズHCはロックを含めたフォワード陣に知性と運動量、加えて「ストッピング・パワー」という要素を求めている。つまり、大きな相手との正面衝突にも負けない強さを持ち、プレッシャーのかかる場面でも的確な判断のもと、動き回れる選手が欲しいのだ。高校最後の大会で、指揮官の目に留まる活躍はできるのだろうか、注目だ。

 花園での体験は、世界を驚かせるトッププレイヤーになるための階段にもなりうる。山沢も、松田も、牧野内も、この冬の成長を未来につなげてほしい。

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