【ラグビー】大学選手権、国立の切符を手にするのはどの4チームか? (2ページ目)

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 とはいえ、帝京大が優勝候補の筆頭であることに変わりはない。筑波大戦後の会見で、表情をこわばらせている泉主将に気付いた岩出雅之監督が「笑えよ」とからかう場面があったが、指揮官の表情に焦りはなさそうだった。トップリーグで優勝経験を持つある指導者は、岩出監督についてこう分析する。

「岩出さんなら、最後に勝つためにはこのあたりで負けておいた方がいい、くらいに捉えているんじゃないですかね」

 筑波大との試合では、司令塔のスタンドオフで森谷圭介が起用された。身長184センチの長身で、ロングキックを放てる期待の1年生だ。ただ、各年代の代表歴はなく、高いレベルでの試合経験が少ない。そのためか、これまで上位陣との対戦で「緊張からくるミス」を連発していた。それでも岩出監督は積極的に森谷を起用した。その意図は何だったのか。

「森谷に伸びてほしい。この一点です」

 要は、シーズン終盤、あるいは来年、再来年を見据えシミュレーションをしていたのだ。さらに指揮官はこうも言った。

「本当の勝負どころになったら、もっと違う決断をするかもしれません。(選手権では)最も選手たちが力を発揮しやすい策を考えます」

 その帝京大は「プールD」に入り、リーグ戦3位の拓殖大、関西2位の立命館大、そしてファーストステージを勝ち上がった福岡工業大と戦う。当然、指揮官の視線の先にあるのは来年1月2日以降の戦いだろう。4連覇に向けてシビアな選手起用をする公算は高い。

 一方、帝京大に勝った筑波大は4年前からスカウティングの強化を図り、全国から有望な選手を次々に獲得。昨年度の選手権では国立大学初の4強入りを果たすなど、着実に成果を上げている。今季、古川拓生監督は「ポゼッション(ボールを保持する)ラグビー」を打ち出した。「今のメンバーを考えると、動きの中でそれぞれの能力を出せる選手が多い」とその理由を説明する。

 ウイングの兄・匡克、フッカーの弟・圭克の彦坂ツインズが突破力を発揮し、接点ではロックの鶴谷昌隆、フランカーの水上彰太が体当たりしてボールに絡みつく。昨季、帝京大の岩出監督に「筑波大の弱点はフロントロー(スクラムの最前列)」と指摘されていたが、12月1日のゲームでは帝京大のスクラムを押し切った。あるライバル校の選手は、「(彦坂)圭克は下半身に馬力があって、スクラムでヒットした後にグッとさらに圧力をかけてくる」と言う。昨季と同じく充実したメンバーが揃う今季は、大学日本一を狙うと公言する筑波大。選手権では「プールA」に参戦し、対抗戦5位の慶應大、リーグ戦4位の法政大、関西3位の関西学院大とぶつかる。

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