【ラグビー】代表候補選手も躍動。
「成長」にこだわる帝京大のワンランク上の強さ

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by AFLO SPORT

 強いチームは疲労がピークに達した時の基本プレイを見ればわかる。例えばタックル。まずタックルポイントにいき、低く入ってバインドを締め、足をドライブさせる。

 勝負どころは、後半25分からの約5分間のゴール前ピンチだった。リードが13点。明治に2度、PKからスクラムを選択され、力ずくのトライを狙われた。でもFWの結束が崩れない。ひとり一人が低いタックル、素早い起き上がり、サポートを繰り返す。ひとことで言えば、真面目なのだ。

 紫紺のジャージの怒とうの攻めを、深紅のジャージが堅実な固まりとなって押し返した。ゴールを割らせなかった。

 岩出監督がほくそ笑む。

「全然、安心して見ていました。これを守り切ったら終わるなって思っていました」

 トライを奪えなかったことで、明治FWの足が止まった。そうなると、FWとSOの間のディフェンスがもろくなる。直後、帝京大SOの中村亮士が狙い通り、密集サイドを強引に突く。ダメ押しのトライを奪った。

 そういえば、遠くの黄金色のイチョウ並木が揺れるほど、この日は強い風が吹いていた。帝京大はコイントスで勝って、あえて風下の陣地を選択した。つまり風上に回る後半勝負と踏んでいた。

 主将の泉敬が明かす。

「後半は自信がありました。僕らは我慢強いので。チームが成長している段階です。試合への姿勢はおとなの集団になっているんじゃないかと思います」

 結局、45-20で快勝した。個々のフィジカル、接点のコンタクト力では互角。スクラムでは劣勢だったけれど、しんどい時のタックルと結束力で明治を上回った。これはもう、私生活を含めた日々の鍛錬の結果だろう。

 今季の大学ラグビーのトップクラスをみれば、個々のフィジカルとブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)はどこもレベルアップしている。ただハンドリングスキル、判断力は少し落ちている。

 その中にあって、帝京大の攻撃は迫力がある。もはやFWの強さとディフェンス力は伝統となった。ボールを動かすようになってトライをとる攻撃力は昨季よりアップしている。象徴が春に日本代表に選ばれたSO中村である。ランだけでなく、パスもキックもタックルもいい。ゲーム展開が読める。

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