【ラグビー】18歳・藤田慶和に日本代表の先輩たちが伝えたいこと

  • 向風見也●文 text by Mukai Fumiya
  • 井田新輔●写真 photo by Ida Shinsuke

 多くの選手が「タフな毎日だ」とこぼす中、黙々と駆け回っていたのが大野だった。大学を卒業して間もない若手も「10歳以上も上なのに、よく僕たちと同じ練習ができますね」と驚きを隠せなかった。初選出のフッカー有田隆平も、こう感心するのだった。

「練習中、一番きついと思うところでキンさんはまだ走っていた」

 フォワードの最年長者として、大野は「年寄り風を吹かせるんじゃなく、若手に負けん気を出して挑んでいく」ことを意識していた。チームを強くするには「キツいことをみんなで一緒にやるのが大事だなと、常々思っています」。特別な言動で積極的に引っ張るわけではない大野の普段の姿勢から、周りの選手は多くのことを学んだ。

 同じく普段通りの姿勢で若手に影響を与えていたのが、34歳とチーム最年長のウイング小野澤宏時だ。その小野澤と静岡合宿で同部屋だった藤田はある時、練習前に部屋でストレッチをしている小野澤の姿を見た。

「自分の身体の張っているところをちゃんと伸ばして、グラウンドに行ったらすぐに動けるという感じだった。これから長くラグビーをするには、こう(小野澤のように)しないといけないのかなと思いました」

 常に「自己完結できる準備」を心がける小野澤にとっては、いつものように安定したパフォーマンス維持のための準備をしていた過ぎない。しかし、将来は『スーパー15』(南半球最高峰リーグ)でのプレイを夢見る藤田にとっては、「さすがプロだな」と思い知らされた瞬間だった。

 私用で合宿から一時離脱することもあった小野澤だが、代表に帯同する際は「無償の愛。持っている情報はみんなにすべて提供する」と話していた。

「どういう姿勢、準備が必要かを早く知っていれば、プラスになることも多いので」

 代表では本職のフルバックではなくウイングを務め、不慣れな動きに戸惑うこともあった藤田にしばしば声をかけていた。その小野澤からいい形でパスをもらうためのポジショニング、ランニングコースなどのアドバイスを受けた藤田は、「もっと考えてラグビーをしなきゃいけないな」と感じた。

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