【ラグビー】195cm、129kg。フィジーの怪物が「トライ数新記録」達成間近 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke


 冷たい雨が降る中、ナドロはふたつのトライを重ねた。厳しいマークをものともせず、まず前半12分に先制トライをもぎとった。さらに後半8分、サインプレイから一直線に走り込み、ひとりをハンドオフではたき込み、ふたりを強靭な足腰ではね飛ばしながら、ポスト下に飛び込んだ。

 これでシーズン18トライとし、『トライ王』を確実にした。TL記録のシーズン最多トライ(2006~07年・北川智規)まで、あと1本である。試合は24-18でNECが勝利し、勝ち点をリーグ4位の41と伸ばした。

 大活躍にも、ジャージをドロドロにしたナドロは謙虚だった。「トライはもちろん、ハッピーだ。でもチームの勝利の方がもっとハッピーだよ。チームに貢献するなかで、トライチャンスが生まれればいい」。ブルブル震えながら笑う。「寒すぎた。寒いのは好きじゃない。ボールに少しでも多く絡むことで、寒さを解消しようと努めたんだ」

 フィジー出身、オーストラリア育ちの23歳。フランス、イングランドのクラブチームでもプレイしたことがある。オールブラックスの伝説の大型WTB、ジョナ・ロムーになぞらせ、「ロムー二世」と称されていた。身体が柔軟なのだろう、プレイもやわらかい。下に転がったボールでも「ひょい」と拾いあげる器用さもある。

「日本の生活が気にいっている」と、ご機嫌だ。「イヤなことはひとつもない。オーストラリアとの違いは、いつも電車が時間通りにくること。すごい国だなあ」

 日本食も問題ない。好物がラーメン。「味噌ラーメンがベストだ」。ただラーメンを食べすぎて体重オーバーになったそうで、ただいま「ラーメン断ち」していると笑う。「でも、今日はこれからフライドチキンを8ピース食べるんだ」。苦手が「たこ焼き」。

 初めて覚えた日本語は、と聞けば、「ツカレタ」と笑顔で即答した。「ベリー・タイアード(とても疲れた)。いつも、ツカレタ、ツカレタ」

 気さくな、いいオトコである。目標がリーグ制覇。チーム初のプレイオフ進出(4位以内)を果たし、頂点をにらむ。

「日本のラグビーはレベルが高い。すべてのチームをリスペクトしている。マークはきつくなるだろうけれど、次の試合にフォーカスして勝ち続けたい」

 百聞は一見に如かず、である。一度、ナマの『トライキング』のド迫力プレイを見てはいかがか。

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