全日本卓球での東京五輪組の敗退は「波乱」ではない。男子のアラサーたち、女子の黄金世代のひとりも進化 (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 そして決勝まで勝ち進んだ30歳の松平も、かつては日本代表として世界の舞台で戦い、水谷や岸川聖也らとともに日本男子卓球の一時代を築いた名手だ。

 2006年の世界ジュニア選手権で、当時15歳の中学3年生ながら日本人初の男子シングルス優勝を成し遂げ、2009年の全日本選手権では準優勝。2017年には世界ランキングを自身最高位となる9位まで上げ、翌年のブルガリア・オープンでは準決勝で同年の全日本王者・張本を破って銀メダルを獲得している。

 その後、2019年11月に自身のSNSで国際大会からの引退を表明。ナショナルチームから離れ、Tリーグや国内大会だけに専念していた。そのため2009年以来、13年ぶりの全日本選手権決勝という大舞台に立つ"マツケン"の姿に胸を熱くした卓球ファンも多かったのではないだろうか。

 戸上に敗れはしたが、柔らかい天才的なボールタッチや芸術的なブロック技術、代名詞でもあるしゃがみ込みサーブ(通称:マツケンサーブ)の切れ味は健在。圧倒的なパワーを武器に、決勝までの5試合で1ゲームしか奪われていない戸上から唯一2ゲームを奪取するなど、技術力の高さをあらためて証明した。

 28歳の吉村に、30歳の松平。加えてベスト今大会の8以上には、東京五輪代表の丹羽孝希(27歳)や世界ランク最高位18位の吉田雅己(27歳)、昨年の全日本社会人選手権王者の上田仁(30歳)といった顔ぶれが並び、「若手には負けない」というベテランの意地が見えた。

 松平は「出ない」意向を示しているが、ベスト16以上の選手は3月のパリ五輪代表選考会に参加する権利を得た。経験豊富なベテラン勢も、代表入りへのチャンスを虎視眈々とうかがっている。

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