早田ひなの快進撃に卓球王国・中国も要警戒。パリ五輪では日本に欠かせないピースとなる理由 (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • Photo by Itaru Chiba/AFLO

【東京五輪で抱いた想い】

 そして、世界卓球直後の12月に行なわれたWTTカップファイナルズ・シンガポールでも、世界女王の王曼(ワン・マンユ)を下して勝ち上がってきた香港の杜凱琹(ドー・ホイカン)を破り、女子唯一のベスト4入り。準決勝で、同い年のライバルでもある中国の孫穎莎(スン・イーシャ)に敗れたものの、持ち前のパワフルなドライブで応戦するなど、早田らしい戦いで年内最後の国際大会を締めくくった。

 試合後には、「2022年はしっかり自分で勝ち上がって、中国人選手とどんどん試合をして、いつか勝てるように頑張りたい」と、来季に向けて意気込みを語った。

 2021年の後半、"卓球王国"中国をはじめ、世界各国を"警戒モード"にさせた早田。ここまでの快進撃を見せた裏には、東京五輪での経験を経て抱いたある想いがあった。

 同大会で早田はリザーブとして参加し、ボール拾いや練習相手として伊藤、石川佳純、平野美宇を陰ながらサポート。その献身ぶりは、伊藤が「朝早くから夜遅くまで帯同してくれて、みんなで戦ってるんだなって感じたので、毎日感謝しっぱなしでした」と話すほど。表舞台からは見えない裏側で、早田の存在は彼女たちの大きな支えとなっていた。

 幼少期から切磋琢磨してきた伊藤や平野が、夢の大舞台で躍動する姿を間近で目にし、悔しい気持ちは当然あっただろう。だがそれ以上に彼女の心にあふれていたのは、伊藤らの活躍に対する喜びと、周囲への感謝の気持ちだった。そのことについて、自身のSNS(Instagram)でこう綴っている。

「監督、コーチ、スタッフが常日頃から選手が勝つためにどれだけの想いで指導をして、どれだけの想いで一つ一つの技術や人間力の指導をしているかを身に染みて感じました。今回この気持ちを自分の肌で感じることが出来たからこそ、お世話になった方々へ恩返しをしたい気持ちがこれまで以上に強くなりました」(原文ママ)

 そして最後に「人としてもっともっと成長し、皆さんの期待に応えられるような、今卓球を始めた子達に大きな夢を与えられるような人になりたいと思っています」と決意を新たにした。その想いが、その後の彼女を卓球選手として、ひとりの人間として強くした。

 2022年、夢のパリ五輪に向けて、早田の進撃は加速する。

(第11回:松島輝空(卓球)張本智和に続く14歳の「怪物」>>)

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