伊藤美誠への対策が象徴する中国の本気。卓球女子団体で日本がストレート負けを喫した理由 (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by JMPA

 第2試合のシングルスは、エースの伊藤と孫穎莎(スンイーシャ)による、2000年生まれの同級生対決。前述の日本に対する「研究」と「準備」において、中国が特に入念に行なってきたのが「伊藤美誠対策」と言えるだろう。

 この2人は女子シングルス準決勝でも対戦しており、孫穎莎は緩急を交えて伊藤を翻弄した。ボールの強さは中国選手の中でも1、2を争う孫穎莎だが、あまり回転もスピードもない、いわゆる"ナックル(無回転)"に近いボールを加えることでタイミングをずらし、ミスを誘発していたのだ。野球でいえば「チェンジアップ」。速球を待っていた打者が、思ったよりボールが伸びて来ず、待ち切れずに上体が前のめりになってしまう。あの感じだ。試合結果はゲームカウント0−4とストレート負けを喫し、伊藤は「悪くはなかったけど、惜しくもなかった」と悔し涙を浮かべた。

 そして、伊藤にとってリベンジマッチとなった団体決勝の2試合目。やはり孫穎莎は緩急を交えたラリーを展開した。さらに、少し緩めのナックルボールをバックサイドの奥側に打つことで、伊藤は肩が上がってしまって強いボールで攻めることができない。それにより返球が甘くなり、孫穎莎が強打で決めるケースが何度か見られた。

 そういった打ちづらく、攻めづらくする戦術によって2ゲームを奪われた伊藤。3ゲーム目にはフォア、ミドル、バックサイドにサーブを散らし、そこに長短も加えることで一気に自分のペースに。11ー3とゲームを奪い返し、伊藤の逆転劇を予感させた。だが、孫穎莎が反撃ムードを振り払う猛攻を見せ、前半とは打って変わって、自慢の強打中心のラリーを展開。緩急の激しさについていけなかった伊藤は、3ー11で第4ゲームを落とし、ゲームカウント1−3で敗北。リベンジを果たすことはできなかった。

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