2021.08.01

平野早矢香が振り返る卓球界初のメダル。試合前日の夜に「無理です」と答えたまさかの変更

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

――準決勝のシンガポール戦では、その試合では組む予定がなかった石川選手とのペアでいくことを、村上恭和監督から急に伝えられたとも聞きます。

「そうなんですよ。本来ならシンガポール戦では福原さんと石川選手のペアで臨むはずだったんですけど、準決勝前日の夜にいきなり監督から電話がかかってきて、『明日のダブルス、佳純と平野でどうや?』と。すぐに『無理です』って答えました(笑)。私は何度も練習を積んで自信をつけて、心を落ち着かせた状態で試合に臨みたいタイプなので、その時は『ちょっと勘弁してください』『変えるならもっと早く言ってください』というのが正直な気持ちでした」

――メダルがかかった試合で、予定していたペアを変えるというのは驚きですね。

「シングルス結果を踏まえたその時の状況を見ての監督の判断で、ダブルスは私と石川選手のほうがいいんじゃないかと。なおかつシンガポールのエースである馮天薇(フォン・ティエンウェイ)に対しては福原さんのほうが相性がいいという思いもあったのかもしれません。試合前夜の突然の変更だったので驚きましたし不安もありましたが、最終的にはダブルスのペアを変更し、福原さんがシングルスで2試合(ダブルスで出場する選手はシングルス1試合)出るオーダーになったんです。

 結果、第1試合のシングルスで福原さんが馮天薇に勝ち、第2試合のシングルスの石川選手、第3試合のダブルスと連勝してメダルを確定させることができた。私と石川さんのペアは対カットマン専用のダブルスだったので、本来ならなかった選択でした。極限状態で戦っているからこそ、何かを感じ取った采配なんじゃないかと思います」

――現場の選手や、その場にいて流れを感じている人じゃないと生まれない発想だったと。

「そうですね。それと実は、試合当日の朝に私と石川選手でダブルスの練習に向かったんですけど、先にシンガポールの選手たちが練習していて。前日にドイツとの対戦で私と福原さんがダブルスを組んでいたこともあり、シンガポール陣営もそのペアで来ることを想定して、右利き同士のペアで練習していたんです」

――相手は、それまで組んでいないペアで臨んでくるとは考えていなかったんでしょうね。

「そうなんです。だから、わざわざ石川選手とのダブルスの練習を見せる必要はないと思って、彼女たちがいなくなるまで、ずっとシングルスの練習をしていました。そういう練習から戦いは始まっているというか、駆け引きがあるんです」

――本番では、シンガポールも驚いたでしょうね。

「実際に、オーダー交換の時はびっくりしていましたね。その時は、前半の1番と2番のシングルスのオーダー交換があるんですけど、ダブルスはその2試合の後に交換するんです。だから3試合目が始まる時に私と石川選手が出てきたから、相手は『えっ!?』となって(笑)。そこは『してやったり』という感じでした」