石川佳純が全日本優勝で証明したこと。20年間培ってきた対応力で進化 (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

 この場面について、石川は「『あー、1点取れない......』って緊張してしまって(笑)。優勝から遠のいていたし、9-9になった時は心臓が飛び出そうになった」と笑みを浮かべながら回想する。それでも「『大丈夫、まだまだここから』と切り替えました。お互い緊張しているし、『"心"の勝負だ』と勇気を出した」と覚悟を決めた。

 その言葉どおり、伊藤のバックスマッシュに対して、フォアで相手の逆をつくストレートに打ち返し、ノータッチで決め切った。この場面での思い切ったコースどりと、力強いスピードドライブで攻める判断。驚異の"心"の強さだ。

 最後は、伊藤のバックサイドに渾身のスマッシュを叩き込んだ。両手を高々と上げて喜びを噛みしめると、その瞬間、一気に涙が溢れた。

 この涙には、さまざまな想いが込められている。

 冒頭でも触れたように、近年では若手の台頭が著しく、伊藤や平野のようなスピード、早田のようなパワーを持ち味とする選手が増加。比較的にオーソドックスな攻撃スタイルの石川に対しては"限界説"も囁かれ、石川本人も、「もう無理なんじゃないかって思ったこともあるし、(限界と)言われることもいっぱいあって......。自分のプレースタイルや年齢をマイナスに考え落ち込むこともあった」と告白した。

 そんな石川に勇気を与えたのは、コーチや練習パートナー、そして家族からの言葉だった。

「みんなが『全然やれるよ。もっと自分の可能性を信じて』と言ってくれて、『あぁ、そうだよなぁ。自分で自分を信じないとダメだよな』と。最近は楽しく練習もできているし、『やりたいようにやればいい』と思うようになりました」

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