石川佳純が全日本優勝で証明したこと。20年間培ってきた対応力で進化

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

 さらに、「技術を磨き直した」という"バックハンドでループドライブ(通常のドライブ以上にゆっくり、山なりで、強く回転をかける技術)"で緩急をつけて相手を翻弄。伊藤はそのボールに対応できず、オーバーミスをして思わず苦笑いを浮かべる場面も。そのまま自分のペースに持ち込んだ石川が11-7でゲームを奪取し、ゲームカウント1-1のタイとした。

 第3ゲームも相手の逆をつくプレーや、徹底したバックサイドへのロングサーブなど戦術を変える石川。しかし伊藤が徐々に対応し、逆にコースを散らして揺さぶりをかけ、一気に逆転。ゲームカウント2-1と勝ち越した。

 続く第4ゲーム、石川は中陣から前陣でのプレーに変更し、攻めに出て序盤はリードするが、前での打ち合いは伊藤の"主戦場"。一撃必殺のカウンター"みまパンチ"や、無回転のナックルとドライブを織り交ぜた速いピッチでの攻めに追い詰められ、逆転を許す。そのまま7-11でゲームを奪われて優勝に王手をかけられた。

 もう後がない。2ゲーム連続で逆転され、精神的なダメージも大きかったはずだが、石川は「苦しい試合になることは最初からわかっていた。序盤でリードしてもゲームを取れないパターンが続いていたけど、『諦めずに、もっと思い切ってやりなよ』と自分に言い聞かせた」という。

 その開き直りもあってか、第5ゲームで石川は伊藤の強打をことごとく返し、ループドライブの攻めもより効果的になっていく。一進一退の攻防が続いて10-10のデュースにまでもつれながら、最後はサービスエースで奪取。勢いのままに第6ゲームを11-5と大差で制して望みをつないだ。一方の伊藤は、得意のミート打ちや、通常のチキータとは反対の側面を捉えて返す"逆チキータ"もオーバーミスするシーンが目立つようになるなど、攻撃のリズムが崩れていた。

 そして迎えたファイナルゲーム。一度は9-5と石川が大きくリードするが、すさまじいラリーを制するなど、伊藤が驚異の粘りで4連続ポイントを奪って同点になった。

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