早田ひなは新たな武器を手に入れた。苦悩の1年を経て才能が開花 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 中村博之●写真photo by Nakamura Hiroyuki

 一方で早田は、世界選手権の選考に漏れたあとのTリーグファイナルでMVPに輝き、東京五輪メンバー発表後の今回の全日本でもシングルスで優勝。大きな挫折のあとにスイッチが入り、好パフォーマンスを披露している。優勝後の「頑張っても、頑張っても結果が出なかった」というコメントからも、自身と向き合うことで変化を求め、苦しい時間を過ごし成長につなげた早田の苦悩が感じ取れた。

「試合の中で迷ってしまうところがあり、悩みながらプレーしすぎることがある」
「大事な局面でも振り抜くのではなく、入れにいってしまうことが多々あり、それを後悔することがありました」

 昨年の取材時に、本人がそう話した課題は、今大会では一切見られなかった。選考ポイント6番手で代表選考に漏れ、自分を追い込み集中して練習に臨めたという早田のプレーは、これまでとは見違えるほどだった。プレー中の迷いが消え、そこに判断力も伴ったことが優勝につながったのだろう。完全に吹っ切れた早田は、これほどの選手になるのかと驚かされた。

 大会を通して進化が見えたのは、昨年から強化に取り組んだというサーブとレシーブだ。サーブに関しては、ロングサーブを随所で見せる度胸もさることながら、ゲーム毎にパターンを変えるなどバリエーションの豊富さも目立った。

 さらに、「自分のサーブからの3球目と5球目。レシーブからの2球目と4球目の攻撃を意識的に変えていった。結果として、そこからの展開や駆け引き、広がりが変わりました」と本人が話すように、サーブとレシーブを起点に攻撃につなげる組み立てを意識し、得点を重ねた。

 また、持ち味である両サイドからの強打に頼りすぎない冷静な試合運びも、これまでにはあまり見られなかった部分だ。準決勝の伊藤戦では、これまでの早田であれば100%の力で打ちにいき、アウトになっていたような場面でも、冷静にコースに打ち分けてラリーを制する場面が多々あった。伊藤にとって早田はダブルス世界一も経験したペアのパートナーだが、この日の早田のラリーに伊藤は対応しきれなかった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る