張本智和が弱点を武器に不振→成長。打倒中国勢と五輪頂点が見えてきた (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Kyodo News

 6月の香港OP準々決勝、日本人対決となった水谷隼との一戦でフォアサイドを中心に攻められるも、進化した張本は回転量の多いフォアドライブで打ち返して勝利。復活の兆しを見せ、続く8月のブルガリアOPでは、中国の新鋭・趙子豪 (チョウシゴウ)を破って2019年シーズンのツアー初優勝を飾る。試合後には、「本当にメンタルが強くなった。悔しい思いをしながら練習を頑張ってきて、やっとここで今年ひとつ目の結果が出た」と手応えを口にした。

 12月1日の男子ワールドカップ準決勝では、リオ五輪金メダリストで、世界卓球3連覇中の馬龍(マロン/中国)を下して"絶対王者"超えを果たした。さらに決勝でも、当時の世界ランキング1位、樊振東(ファンジェンドン/中国)と互角の試合を繰り広げた。

 フォアハンドに球威と安定性が生まれたことによって、もともと最大の武器としていた、バックハンドが生きるようになった。台上の短いボールを手首の反動を利用して払う"チキータ"を、フォアの攻撃とバランスよく使えていることが、この快進撃につながっている。

 そしてついに、11月のオーストリアOPでの他の日本選手の結果を受け、世界ランク日本人上位2位以内が確実に。苦しみ抜いた末にたどり着いた歓喜の瞬間だった。それでも張本は「(五輪に)出るだけじゃなく結果を残すのが目標」と冷静にコメント。日本のエースが見据えるゴールは、もっと先にある。

 その後、連覇がかかる12月のグランドファイナルでは、準々決勝で12月発表の世界ランキングで1位に躍り出た許昕(キョキン/中国)にセットカウント3-4で惜しくも敗退。第6、7ゲームはいずれも先にマッチポイントを握っていただけに悔やまれるが、この試合を含めた2019年の後半の戦いぶりを見ても、中国勢の背中は決して遠くない。それだけに、五輪本番までの残り約7カ月、どのように過ごしていくかが重要だ。

 まだ若く、伸び代はある。2020年からどのような成長曲線を描き、飛躍を遂げていくのか。2019年に大きな壁を乗り越えたように、またひとつ、新たな進化を期待したい。

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