張本智和が弱点を武器に不振→成長。
打倒中国勢と五輪頂点が見えてきた

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Kyodo News

東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン
卓球 張本智和 編

 12月21日から2日間、今年最後の大会となる卓球ジャパントップ12が宮城県・仙台市で行なわれ、東京五輪の男子シングルス代表選考を満たした張本智和が2年連続の優勝を果たし、表彰台で笑顔を見せた。その肩の荷が下りたような表情からは、16歳の若き日本のエースにとって、この1年間がどれだけ「もがき苦しんだシーズンだった」のかが伺えた。
 昨年のワールドカップ準決勝で、中国の馬龍を下した張本 昨年のワールドカップ準決勝で、中国の馬龍を下した張本 張本は、2018年12月のワールドツアーグランドファイナルで最年少優勝(当時15歳)を達成し、心身ともに最高の状態で代表選考が行なわれる2019シーズンに突入。グランドファイナルの優勝で世界ランキングは、5位から日本人男子の最高位を更新する3位に上がり、誰もが同1位で東京五輪を迎えることを夢見た。

 しかし、その期待とは裏腹に、2019年は苦難の連続だった。連覇を狙った1月の全日本選手権では、同じTリーグの木下マイスター東京でプレーする大島祐哉にセットカウント3-4で振り切られ、まさかの準決勝敗退。そこから気持ちを切り替えられないまま、Tリーグでも連敗を喫するなど、極度の不振から抜け出せなくなっていた。

 張本は当時を「卓球を15年間やってきて、初めて『負けても仕方がない』と思ってしまった。今思えば、プロ意識が欠けていたんだと思います」と振り返っている。

 さらに国際試合でも、以前より「苦手」と言われていたフォアハンドを徹底的に研究され、4月の世界選手権シングルス4回戦で世界ランキング157位(当時)の格下・安宰賢(アンジェヒョン/韓国)に敗退。「何も考えられなかった。信じられない気持ちだった」と、悔しさのあまり涙を流し、ベンチから立ち上がれなかった。

 五輪への焦りか、日本のエースとしての重圧か。今まではその実力と強気の姿勢で難敵を次々と退けてきた張本でも、選考レースが進むに連れてプレッシャーで押しつぶされそうになっていた。

 それでも、弱点を克服すべく前を向いた張本。本人が「今までにないくらい厳しい練習をした」と話すほどフォア打ちに時間を費やし、下半身強化に努めた。それによって球威が増したフォアハンドは、すぐさま「弱点」から「武器」へと変化する。

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