「大魔王」伊藤美誠のプレーは予測不能。
中国も恐れる独創的な進化

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Kyodo News

東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン
卓球 伊藤美誠 編

 東京五輪の女子シングルス代表を確定させている伊藤美誠は、"卓球王国"中国からも恐れられ、「大魔王」と呼ばれるようになった。昨年12月時点での世界ランキングは自身最高の4位で、トップ3を独占する中国勢を捉えようとしている。

中国のトップ選手相手に勝利が増えてきた伊藤中国のトップ選手相手に勝利が増えてきた伊藤 2018年シーズンから、日本人選手の中では「頭ひとつ抜きん出た存在」であったことは間違いない。しかし、2019年に入っても進化は止まらなかった。1月の全日本選手権では、シングルス、ダブルス、混合ダブルスでいずれも優勝し、2年連続での3冠を達成。日本卓球女子初の快挙を成し遂げ、さらに強さが増した印象を残した。

 国際大会では、5月の中国OP準々決勝で、当時の世界ランキング1位の丁寧(テイネイ/中国)を相手に大金星を挙げて3位。続く香港OP(6月)で準優勝、オーストラリアOP(7月)、ブリガリアOP(8月)では両大会とも3位と、安定した成績を残し続けた。

 さらに、10月開催のスウェーデンOPとドイツOPではいずれも準優勝。スウェーデンOPでは、決勝で現在の世界ランク1位・陳夢(チェンムン/中国)にフルゲームで競り負けたものの、準々決勝で中国の次期エース候補である同6位の王曼昱(ワンマンユ)、準決勝でも同2位の孫穎莎(スンインシャ/中国)を破った。ドイツOPでも、2018年世界ジュニア女子シングルス王者の銭天一(チェンティエンイ/中国)を倒すなど、"中国人キラー"ぶりを見せつけた。

 強さの要因は、ラケットを自在に操ることで生み出される「予測不能なプレー」と、さまざまな技術を大舞台で試しながら自分のものにしていく「強靭なメンタル」が挙げられる。

 今や伊藤の代名詞にもなっている、コンパクトなテイクバックから放たれる一撃必殺のカウンター"みまパンチ"や、バック面の回転のかかりにくい表ソフトラバーによるナックルボール。加えて、通常のチキータと同じ構えから逆回転をかけて飛ばす"逆チキータ"に、回転や長さのバリエーションが豊富なサーブなど、挙げるだけでもキリがないほどテクニックとコンビネーションは多彩だ。

 あまりの技の多さと独創的なプレースタイルから、中国でさえも攻略の糸口を見出すために「仮想・伊藤美誠」に見立てた選手を複数人用意して対策を練っている。その中国の徹底ぶりからも、伊藤が攻撃の引き出しを増やすほど、卓球王国の壁を打ち崩す可能性は高まると言えるだろう。

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