水谷隼、人生初の大スランプ。「ボールが消える」から打開の一手は? (3ページ目)

  • Photo by Chiba Itaru/AFLO

――今シーズンは、丹羽選手(元琉球アスティーダ)も木下に加わり、日本のトップ3が揃う盤石の布陣となりましたね。

「丹羽が木下に入ったことで、『絶対に木下が優勝だ』という見方がより強まったでしょうね。でも、昨シーズンも絶対的な優勝候補に挙げられながら、実際には紙一重の試合が多くて、ファイナルもギリギリの戦いでした。"勝って当然"というプレッシャーも大きくなりますが、それを周りに悟られないようにスマートに勝つのが"強さ"だと思っています。そんなふうに勝利を重ねて2連覇できるように、僕も成長しないといけませんね」

――昨シーズンの途中には、「ここ1年、ボールが見えない」という衝撃の発言もありました。とくに観客席が暗い会場で、コートを囲うフェンスにLEDの掲示板があるとボールが見えづらいとのことでしたが、その頃から症状に変化はありましたか?

「変わっていないですね。相手がサーブを打とうと構えた時にボールが消えて、その後にダイヤモンドのように輝いてこちらに向かってくる感じです。だから、常にボールへの反応が遅れるんですよ。それでも勝てるようにスキルを上げていこうと思っていましたが、会場はどんどん観客席が暗く、反対にコートを照らす照明は明るくなっていき、自分にとっての苛酷な環境になっていきました。

 練習でできていたことが試合で出せないことが続いて、これは言い訳になってしまいますが、『この環境ではどうやっても勝てない』とかなり追い詰められていました。それを"ハンデ"と割り切って、サーブでもレシーブでも何でもいいから、状況を打開できるような術を新しいコーチと見つけて上を目指したいです」

――東京五輪では、フェンスにはLED看板は設置せず、に「紅色にする予定」という発表もありましたが。

「そこが僕のモチベーションになっています。自国開催ということもあって、僕の声も届いているでしょうし、そういう配慮をしてくれると信じている。もし違う国での開催で、スポンサーとの関係もあってLEDの掲示板を使用せざるを得ないとなっていたら、僕はすでにオリンピックを目指していなかったと思います」

――世界ランキングを上げるために重要なワールドツアー、その先にある五輪出場に向けて、意気込みを聞かせてください。

「シングルスで五輪に出場するために、張本か丹羽を(世界ランキングで)上回らないといけないので、この8月から12月までのワールドツアーで全力を尽くします。優勝を意識せず、いかにランキングを上げられるかだけを考えて、やれるだけのことをやりたいと思っています」

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