バスケのようでバスケじゃない。
英国生まれのネットボールが面白い

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 日本代表の活動費が自己負担とは驚きだが、それが日本のネットボールの現状である。なんとかその状況を打破しようと、安倍さんはスポンサー探しを本格的に考えている。すでに会社にサポートを提案したが、野球、サッカー、ゴルフと大口の契約を結んでいるので「難しい」と断られたという。

「チームとしてまだまだ強くないですし、露出も少ない。スポンサーするだけの対価を得られないんです」

 アジア選手権で優勝でもすればメディアの関心も一気に高まるだろうか、そこまでの実力はまだない。知名度はお世辞にもあるとは言いがたく、この日、試合を見にきていたのは選手と関係者のみだった。

 優勝したチームにはカップが手渡されていたが、副賞は大きなお菓子の袋詰めだった。それを見た時はさすがに驚いたが、少しでも何かを提供したいという協会の気持ちは伝わった。

 6月末から鹿嶋で開催されたアジアユースのIDも自分たちでつくり、100円ショップでストラップを買うなど、なんとかやりくりしている。

「もう、こういうのがずっと続いています。みんなボランティアで大会を開いているので、なんとかスポンサーを見つけて、もう少し組織をシステム化していきたいんですけど......」

 安部さんは困った表情を浮かべるが、そこに悲観的な暗さはない。プレーを楽しむとともに、そういう状況にも「仕方ない」と割り切った明るさがある。

「将来的な夢は、スポーツとして認知され、もっと全国的にネットボールをやれる場所が増えて、各地域にクラブチームができて、バスケやサッカーのように子どもたちにとってひとつの選択肢になることです。あと、日本って生涯スポーツってあまりないですよね。ネットボールはどの年代の人でも楽しめるので、生涯スポーツのひとつになればいいかなって思っています」

 日本ネットボール協会の多胡英子(たご・えいこ)理事長も「小学校の体育の授業に取り入れられるようにし、生涯スポーツにしていきたい」と熱い思いをたぎらせている。

 まだ認知度も知名度もないが、女子選手たちがそれぞれのエリアで一生懸命チームのために貢献しようとする姿には、胸を打つものがある。プレーはもちろん、観戦向きのスポーツでもあるので、ぜひネットボールの面白さを感じてほしい。

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