Tリーグ初代王者争い。水谷と張本の壁は高いが、岡山にも勝機あり (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 そして、試合を決めるビクトリーマッチには、岡山からは第3マッチで勝利した韓国の林鐘勲(イム・ジョンフン)が、木下からは第2マッチで大逆転劇を演じた水谷が登場した。

 1ゲームのみの決勝戦で先手を取ったのはイムだった。強烈なドライブを連発し、ラリーに持ち込んでイムのペースを崩そうとする水谷を押し込んで、2-7と差を広げる。この時、会場の誰もがイムの勝利を予想していたに違いない。水谷自身、「正直、この展開では厳しいと思った」と負けを覚悟していた。だがやはり、水谷の"本当の強さ"は後半にあった。

 さまざまな種類のサービスを使ってイムのペースを乱すと、6連続得点で逆転に成功。イムもなんとか食らいつき、デュースまでもつれる展開になるも、13-13から最後に抜け出したのは水谷だった。

 水谷が「今までの経験上、やはり最後は攻めないと勝てない」と振り返ったように、イムのバックへのツッツキを回り込んでのドライブで14点目。そして怒涛のラリーを制して15点目を奪い、この日2度目の大逆転劇でチームを首位に導いた。

 試合後、岡山の白神監督は水谷に対して「本当に強いから対策しようがない」とお手上げ。だが、「うちはあくまでダブルスに重点を置いているチーム。シングルスで3勝するのは厳しいので、ダブルスで勝ってシングルスでなんとか1勝し、ビクトリーマッチに持ち込めるような構成で臨みたい」と、ファイナルに向けて打倒木下の対策を口にした。

 そのダブルスのカギを握るのは、やはり森園だろう。張本・大島ペアとの試合で見せたチキータへの対応は、後半戦に入ってから随所で輝きを放っている。自身でも手応えを感じているというそのプレーが、ファイナルでも勝敗を左右しそうだ。

 さらに、大一番でペアを組むのは、Tリーグのダブルスで圧倒的な勝率を誇る上田が濃厚。このダブルスで木下相手には6戦6勝と負けなしのため、高い確率で先手を奪い、主導権を握って試合を進めることができるはずだ。

 逆に言えば、ダブルスの負けは"試合の負け"を意味すると言っても過言ではない。水谷も「ダブルスで勝てれば9割優勝できる」と断言するほど、岡山にとっての第1マッチは重要となる。

 そんな大一番に向けて、キーマンの森園は「後続のシングルスの選手がのびのびプレーできるように、『1番は絶対に取るぞ!』と自分にプレッシャーをかけて臨みたい」と力強く話した。岡山がノジマTリーグ初代王者の座を手にできるかどうかは、初戦のダブルスにかかっている。

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