Tリーグ初代王者争い。水谷と張本の壁は高いが、岡山にも勝機あり (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 先制を許した木下は大黒柱である水谷が第2マッチに登場し、台湾の新星・林昀儒(リン・ユンジュ)が挑んだ。リンは後半戦が始まる2月から岡山に加入した選手で、「台湾の張本」との呼び声も高い。

 そんな台湾が誇る17歳が、水谷相手に第1、2ゲームを連取する波乱を巻き起こした。水谷が試合後に「ミスが少なくて、コース取りがうまい」と評したように、リンは読みづらいコースにドライブを放っていく。白神監督が絶賛するサーブとチキータも随所で決まり、水谷を寄せつけなかった。

 しかし、ここから水谷が反撃。第3ゲームは5連続得点で流れを呼び込み、粘る相手を振り切って1ゲームを奪い返した。

「2ゲームは簡単に取られましたけど、3ゲーム目から『そろそろギアを上げていこうかな』と思えるぐらい余裕はありました」

 そう振り返った水谷は、次のゲームも4連続得点でスタートダッシュを決め、ここまで温存していたロングサービスなども織り交ぜながら、自分のペースで試合を展開。11-7で第4ゲームを取ると、カウント6-6から始まる最終ゲームも制した。

 振り出しに戻った試合は、その後一進一退の戦いが続く。第3マッチは岡山が取って勝利に王手をかけると、第4マッチは木下の若きエース・張本と、成長著しい岡山の吉村和弘が激突。この試合を迎えるまでは、吉村が(ゲームカウント2-2の場合に行なわれる)ビクトリーマッチで2勝を挙げており、張本は2月16日の岡山戦から連敗中だったが、この日の張本はいつにも増して気合いに満ちあふれていた。

 その要因について、張本はこう語る。

「今まで卓球を15年間やってきましたが、試合で一度も気持ちが切れることはなかったんです。でも、リーグ前半戦で2位との差が開いたことでモチベーションが下がり、16日と18日(vs琉球アスティーダ)の試合で、初めて『負けても仕方がない』と思ってしまった。今思えば、プロ意識が欠けていたんだと思います。母親にも怒られました。だから今日は、結果はどうあれ、お客さんやチームメイトのために100%の力を発揮しようと決めていたんです」

 その言葉どおり、序盤から飛ばしていった張本は、果敢な攻めと冷静な試合運びで11-6と第1ゲームを先取。2ゲーム目は吉村に3ポイントしか許さないなど、最後まで攻撃的な姿勢を貫いた張本が3-0で勝利した。

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