男子ハンドボール日本代表、世界選手権7戦全敗。でも、光が見えた (3ページ目)

  • 田口有史●取材・文・撮影 text & photo by Taguchi Yukihito

 これまで磨いてきた「スピーディーでクリーンなプレー」は世界に通用する。その手応えを確固たるものにするため、何としてもほしかった勝利にもっとも近づいたのが、予選リーグ最後のバーレーン戦だった。

 中東のチームながら帰化選手に頼ることなく、ユース世代からの強化に成功したバーレーンに対し、日本はこの1年間で5連敗していた。しかしこの試合は、5-1ディフェンス(フリースローラインの中央付近に、ディフェンスをひとり配置する陣形)で相手エースの得点を封じた。

 前半は日本もシュートを決めきれずにリードされて終わったが、後半に入るとシンプルに真っ直ぐゴールへ向かう意識を徹底。この日9得点を挙げ、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた元木博紀を中心に得点を重ね、後半14分には19-14と5点のリードを奪った。

 渇望した勝利は目の前かと思われた。ところが相手の個人技を中心としたオフェンスでジリジリと点差を詰められ、残り40秒で同点、終了3秒前に逆転を許してしまった。

 リードして迎えた試合の終わらせ方が、今後の大きな課題となる。常に試合の主導権を握っていたにも関わらず、終盤のディフェンスで受けに回ってしまったことが相手を勢いづかせることにつながった。また、勝負どころでテクニカルミスが出たり、ペナルティスローを外したりと、精神面での成熟度も勝敗を分けた。
 
 リーグ戦後の順位決定戦を含め、あと一歩のところで勝ちきれなかったのは、土壇場でのシュートの精度、細かなテクニカルミス、勝ちきる気持ちといった、すべての要素における少しずつの差にある。

 その「あと一歩」がなかなか埋まらないことに、歯がゆさを感じるファンも多いだろう。しかし、着実に成長した日本がヨーロッパの強豪チームを苦しめ、開催地のみならず、自国応援のために会場に詰めかけた相手ファンの心をも動かしたことは間違いない。

 東京五輪まで一年半。ここまでの土台の強化が実を結ぶ時は必ず訪れる。監督や選手たちはもちろん、日本ハンドボール界全体で「あと一歩」の底上げをしてもらいたい。その積み重ねが、56年ぶりに日本で開催される大舞台での勝利につながるはずだ。

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