「張本効果」を実感する1年目のTリーグ。注目は「木下包囲網」 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • photo by Matsuo/AFLO SPORT

 一方の女子に目を向けると、木下アビエル神奈川、日本生命レッドエルフの2チームが熾烈な首位争いを繰り広げている。

 木下は、個人ランキングでも1位を走る石川佳純を筆頭に、浜本由惟、中国の袁雪嬌(エン・シュエジャオ)らが存在感を発揮。その木下を勝ち点6差で追う日本生命も木下に引けを取らないメンバーが揃う。平野美宇、早田ひなの代表コンビに加え、台湾の陳思羽(チェン・ズーユ)に、成長著しい森さくら、前田美優ら強力な陣営だ。

 2位の日本生命と、3位の日本ペイントマレッツとは勝ち点20差、4位のトップおとめピンポンズ名古屋とは23差があることから、初年度の優勝争いは実質的にこの2強に絞られたと見ていい。

 個人成績でも、石川佳純が貫禄の勝利数11で単独1位。2位の早田ひなは、10勝無敗で得失ゲーム23と驚異的な成績を残すなど絶好調で、両チームの主役が存在感を放っている。

 とくに早田は、リーグの経験を経て飛躍の時を迎えていると言える。開幕戦の名古屋との試合では、昨年の女子ワールドカップ3位で、台湾代表のエースでもある鄭怡静(チェン・イーチン)に勝利。その勢いは衰えず、男女合わせて唯一となる無敗をキープしている(10戦以上を対象)。167cmと長身でリーチが長く、パワーボールはもちろん、サーブの切れ味もいい。貴重なサウスポーの急成長は、東京五輪で金メダルを狙う女子代表にとって明るい材料だ。

 また、4試合と少ない出場ながら全勝の平野美宇への期待も大きい。今年の全日本卓球選手権の女子シングルでは5回戦で敗退するなど、現在は決して本調子と言えないかもしれないが、リーグ全体で見ても平野への注目度は抜群。開幕戦での、韓国のカットマンである徐孝元(ソ・ヒョウォン)との手に汗握る熱戦は観衆を大いに盛り上げただけに、平野の男子顔負けの"スピード卓球"を楽しみにしているファンは多いはずだ。

 そんな平野は、Tリーグの醍醐味についてこんなことを話していた。

「海外の試合では味わったことのない応援や、観客の方の熱を感じました。これまでになかった応援のスタイルも含めて、今後そういった文化をみなさんと作り上げていけたら面白いですね」

 Tリーグへの参戦を見送った伊藤美誠とは異なる道から東京五輪を目指す、天才少女の後半戦の動向から目が離せない。平野や早田の成績次第では、日本生命が逆転でのチャンピオンになる可能性は十分に残されているだろう。

 男女共により一層"木下包囲網"が敷かれそうだが、木下がそれを上回って初代チャンピオンに輝くのか。注目の後半戦は、1月30日に大阪で幕が開く。

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