水谷隼の兄貴分がTリーグのため奮闘。「卓球をつまみのような存在へ」 (4ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru

――卓球界のなかに、現状で満足している空気があるということですか。

「もっともっと卓球界をあげてTリーグを盛り上げていかなくてはいけないのに、どこかゆったりと構えている部分があるんです。特に卓球関係者が勘違いしているのが、競技人口についてです。確かに卓球は226カ国が国際競技連盟に加盟していて、参加国数はあらゆる競技の中でトップです。イコール卓球人口が多い。だから、『積極的に動かなくてもお客さんは自然と集まるはずだ』という思考が強いように思います。

 でも、プロ野球やJリーグの試合を観に行く人のなかに、競技経験者がそれぞれどのぐらいいるでしょうか。すごくいい例として挙げさせていただくのですが、お客さんがお酒を楽しむ"おつまみ"としてプロ野球やJリーグがあると思うんです。だから、いろんなお客さんが球場やスタジアムに足を運んでくれる。僕は卓球もそういうおつまみのような存在にしたいんです」

――そのためには、どんなアプローチが必要でしょうか。

「試合の見せ方をみんな気にするんですけど、卓球を知らない人にいきなり試合の見せ方を教えたところで、なかなか興味を持ってもらえない。まずは会場に何かしらコンテンツを作って、会場に行く意味を持ってもらうことが重要なんです。見てもらえば、こっちのもんなんですよ。それぐらい、卓球という競技には魅力がある。

 僕はイオンモールで卓球イベントをプロデュースする仕事もしているのですが、そこに隼と松平健太を呼んだこともあります。モールの中に卓球台を置いて、買い物にきたお客さんたちの目の前で2人にボールを打ってもらいました。隼はコートに膝をついてラリーをしてくれたんですが、それでもすごいボールを返せるんです。1800人ぐらいのお客さんが集まったのですが、そんな近くでトップレベルの選手の卓球を見るのはほとんどの人が初めてですから、びっくりしますよね。

そういうのを見てもらうと、卓球に親近感を持ってもらえるんです。膝をついてもあんな凄いボールを打てるのなら、彼らが真剣勝負をしたらいったいどうなるんだろう。そんなふうに新しい興味が生まれると思うんです」

――1年目のシーズンは、内容だけでなく演出にも注目が集まることになりますね。

「各試合の動員、演出、試合内容など、すべてがTリーグの未来を大きく左右すると思っています。これは選手やリーグ関係者の問題だけじゃないんです。もし、Tリーグがうまくいかなくて卓球人気がなくなれば、卓球ショップや卓球教室、卓球メーカーさんたちがすべて衰退していくわけです。卓球のマーケットを広げていくことを、みんなで考えていかないといけません。僕はすべてがプラスになるよう、Tリーグにすべての力を注ぎます」

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