日本生命レッドエルフ村上監督が熱弁「Tリーグを祭り後の受け皿に」 (2ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by Kyodo News

――それはどんな理由からですか。

「東京五輪でメダル獲得が期待される卓球の人気は、2020年まではかなり盛り上がっていくことが予想されます。でも、オリンピックが終われば、必ずその熱は冷めていく。そのときに受け皿となって卓球界を支えるのが、Tリーグです。Tリーグをスタートさせるなら、祭りの後の受け皿として、東京オリンピックの前に作っておくべきだとずっと考えていました」

――リオ五輪後に女子代表監督を退かれたとき、村上総監督は「これからは自分がやりたかったことに専念したい」と語っていました。そのやりたかったことと、Tリーグの理念はつながっているのでしょうか。

「つながっています。私が残りの人生をかけてやりたかったことは、ジュニア世代の育成と卓球の普及活動です。Tリーグは参戦する条件として、2年以内に6歳以下の子どもたちを育成するシステムを構築するよう各チームに求めています。6歳以下というのはこれまでになかったカテゴリーですが、私たちがすでに始めている全国の幼稚園・保育園に卓球台を贈る取り組みは、そのままTリーグのジュニア育成の構想につながっていきます」

――昨年3月に設立した一般社団法人「卓球ジュニアサポートジャパン」の事業ですね。発足時の会見では、全国1000カ所に子供用に開発されたオリジナルの卓球台を寄贈したいということでしたが、現段階で事業はどれぐらい進んでいますか。

「これまでに南は沖縄の石垣島から、北は北海道の幼稚園や保育園に約160台を贈りました。Tリーグの条件と照らして言えば、日本生命レッドエルフの地元である大阪・泉州地区では貝塚、岸和田、熊取町の幼稚園や保育園に計26台贈っています。貝塚には公立の保育園が11施設あるのですが、日本生命の選手やコーチによる巡回指導も行なっています。

 最近は2週間に一度、うちのコーチが保育園の保育士さんたちにも卓球を指導しています。プロの指導者がいなくても、幼稚園や保育園の現場で保育士さんたちに子どもたちと卓球を楽しんでほしいからです。今は地元の貝塚だけの試みですが、目標としている全国1000カ所に同じような取り組みが広がれば、卓球の裾野はかなり広がっていくと思います」

――そうなれば、明らかにこれまでとは違う育成の環境がうまれますね。

「とにかく、卓球という競技にふれる入口を充実させることが重要です。福原愛の活躍を見て、伊藤美誠や平野、早田の"高校生トリオ"が頑張ったように、これからはTリーグで活躍する選手たちの姿を見た子どもたちが『ああいう選手になりたい』と憧れるし、お父さんやお母さんたちも子どもに卓球をさせたいと思うようになるでしょう。そうしたとき、両親や身近な人に卓球のプレー経験がなくても、幼いころから卓球の適切な指導を受けられる環境があれば、そうした子どもたちにもトップ選手になれる可能性が広がっていきます」

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