「打倒中国」を果たすために。
松下浩二が語るTリーグのでっかい使命

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by Tamura Sho/AFLO SPORTS

【Tリーグチェアマン 松下浩二インタビュー 後編】

(前編の記事はこちら>>)

 日本の卓球界にとって、新リーグの誕生はいかに意義があることなのか。そのことを誰よりも熟知し、Tリーグ発足の動きを常に先導してきたチェアマンの松下浩二の胸には今、さまざまな感情が去来しているはずである。

 リーグスポンサーの獲得や、世界トップクラスの選手たちの招聘、実業団リーグとの調整、認知度を高めるための広報活動......。10月24日にTリーグが開幕するまでの多方面にわたる調整は、すべてがスムーズに進んだわけではない。卓球界の先人たちが積み上げてきた歴史に新たな一歩を刻むことになるTリーグは壮大な青写真に修正を加えながら、どんな形で未来の卓球人たちにバトンを手渡していくのだろうか。

 インタビュー後編では、松下チェアマンに具体的なTリーグのビジョンや課題、そして将来の展望について語ってもらった。

日本初の卓球リーグ「Tリーグ」のチェアマンを務める松下氏日本初の卓球リーグ「Tリーグ」のチェアマンを務める松下氏「Tリーグを発展させ、卓球という競技のステータスをあげたい」

――いよいよ10月24日、両国国技館のコートで長年の夢だったTリーグが開幕します。今、松下さんの胸にはどんな思いが去来していますか。

「ようやくここまで来たという感慨はありますが、達成感はないですね。ずっと苦しかったし、今も苦しい(笑)。胸の中にどこかスッキリとしない、もやもやした部分があるのも事実です」

――もやもやした部分とは?

「中国のトップ選手たちを呼べなかったことが大きいですね。Tリーグを世界最高のリーグにするためには、中国のトップ選手をどれだけ集められるかが重要だと思っていましたし、そう公言してきました。10月24日の男子開幕戦を皮切りに、男女合わせてリーグ戦84試合、ファイナルを含めた全86試合を半年間で行う日程を組んだのも、中国の超級リーグと日程が重ならないようにするためでした。海外に放映権を売るビジネスを考えても、その最大のマーケットは中国だと思っていましたから、その点では計算外でした」

――中国に関していえば、超級リーグに日本選手の参加を認めず、そして自国のトップ選手を日本のリーグへ参戦させない方針だと言われています。

「ここ十数年間にわたる世界の卓球界の発展は、中国の力によってもたらされました。しかし、日本がTリーグを中心にさらに強化を進め、中国に匹敵し、超えるような力をつけたときには、両国で世界の卓球界をリードしていくようになるはずです。

 そうなると、両国の関係はもっとおおらかになって、双方の選手がそれぞれのリーグでプレーすることになるのではないでしょうか。かつての『ピンポン外交』で知られるように、もともと卓球は友好のシンボルだったわけですから。将来的には、日本と中国を中心にしたアジアチャンピオンズリーグの構想も頭の中にあります」

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