2018.10.19

卓球界のレジェンド松下浩二。
プロリーグ構想の原点は30年前にあった

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru

現在、Tリーグのチェアマンを務める松下氏 photo by Nakanishi Yusuke /AFLO SPORTS

 隼に関しては、彼が10代前半の頃から日本の卓球史上最高の才能だと思っていました。僕のようにオリンピックには出たけどメダルが獲れない選手で終わらせてはいけないと思っていました。だから、リオで彼がメダルを獲った時はうれしかったですね。

 でも、僕や彼らが経験した環境がベストだとは思えません。これまで日本のトップ選手たちは、他国のリーグに依存して力をつけてきました。男子はドイツやロシア、女子は中国の超級リーグ、と。しかし、男女とも中国にあと一歩と肉迫してきた今だからこそ、"出稼ぎ"ではなく、自国のリーグで強化育成をすべきです。中国のぶ厚い壁を打ち破るためにも、Tリーグを世界最高のリーグにしていく使命があると思っています」

――2009年1月の全日本選手権を最後に引退された後、いろんな場でプロリーグについて言及されていました。しかし当時は、現実味を持って耳を傾けてくれる卓球関係者は少なかったのでは?

「そんな雰囲気はありましたね。2010年3月に日本卓球リーグ発展プロジェクトチームが立ち上がった時も、周囲からは『無理に決まっている』『やめといたほうがいい』という声も聞こえてきました。でも、それまでのプロ宣言やブンデスリーガ挑戦も、最初は『そんなことできるわけない』と言われてきました。たとえリスクがあっても、そこに飛び込んでいかないと成果は得られないことを僕は体験から学んでいる。無理そうだからあきらめるのではなく、僕は僕にしかできないことをやり続けたい。ずっとそう思ってきました」

――確かにプロリーグを提唱される一方、ヤマト卓球を買収して社長に就任、新ブランド「VICTAS」を立ち上げるなど、それまでの卓球界の先人たちとは明らかに違うキャリアを歩んでこられた印象があります。

「いろんな面で後輩たちのロールモデルになることをやりたかったんです。まだ現役だった2001年に『チームマツシタ』という会社を作って大会をプロデュースしたり、隼や岸川たちのマネジメントをしたのも、そのひとつです。

 ヤマト卓球を買収するときには、短い間にデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること)がどうこうと難しいことを必死に勉強して交渉しました(笑)。ビジネスで成功すれば、後輩たちに新しい道があることを見せられますから。そしてそうした挑戦を繰り返すなか、卓球界の枠のなかで動くビジネスでは、なかなか社会貢献につながらない現実とも向き合いました。でも、Tリーグは違います。その点にこそ、僕はTリーグの存在意義、理念を込めたつもりです」

(後編に続く)

■城島充■

1966年、滋賀生まれ。関西大学文学部卒業。産経新聞社会部記者時代に連載企画『失われた命』でアップジョン医学記事賞、『武蔵野のローレライ』でNumberスポーツノンフィクション新人賞を受賞。2001年からノンフィクション作家として独立し、スポーツを中心に多くの作品を発表している。主な著書に『拳の漂流』(講談社、ミズノスポーツライター最優秀賞、咲くやこの花賞受賞)、『ピンポンさん』(角川文庫)。児童書に『にいちゃんのランドセル』『がんばれピンポンガールズ!平野美宇と伊藤美誠』(いずれも講談社)など。今年10月からびわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部の教授も務めている。

◆Tリーグ開幕戦
【男子】
●10月24日(水)18:30~21:00
T.T彩たま VS 木下マイスター東京
BSテレ東にて生中継!

【女子】
●10月25日(木)18:55~20:49
TOP名古屋 VS 日本生命レッドエルフ
テレビ東京(TXN6局ネット)にて生中継!

●10月25日(木)18:30‐20:55
TOP名古屋 VS 日本生命レッドエルフ
BSテレ東にて生中継!

(リーグの詳細は、Tリーグオフィシャルサイトへ>>)

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