日大アメフト事件。ラグビー大西先生の教えに思う「指導者の資質」

  • 松瀬学●文・写真 text & photo by Matsuse Manabu

 つらい会見だった。22日、東京・日本記者クラブで開かれた日本大学アメリカンフットボール部の宮川泰介選手の記者会見である。無数のフラッシュがたかれるなか、黒いスーツ姿の20歳は深々と頭を下げた。

 会見場には約300人のメディアが押し掛けていた。これほどまでに社会問題となった悪質プレーだが、いち学生が顔と名前を出して登壇せざるを得ないとは。日大の対応のまずさは言うに及ばず、大学においてスポーツ指導に携わる人のあり方が問われることにもなった。

会見の冒頭、深々と頭を下げる宮川泰介選手会見の冒頭、深々と頭を下げる宮川泰介選手「ご自身にとって、監督、コーチに信頼はありましたか?」と問われると、宮川選手は数秒の沈黙の後、言葉を絞り出した。

「井上(奨・つとむ)コーチに関しては、自分が高校(日大豊山)2年生の時からの監督をやっていただいていたので、その頃から信頼はしていたのかもしれないです。内田(正人)監督については、そもそも、お話をする機会が本当にないので、信頼関係......というものは、わからないです」

 宮川選手は6日の関西学院大との定期戦で、関学大の選手に悪質なタックルをし、負傷退場させた。自身も反則行為で退場させられた。直後、テントの中で声を上げて泣いていた姿を見た井上コーチから、「"優しすぎるところがダメなんだ。相手に悪いと思ったんやろ"と責められました」と明かした。常軌を逸したコーチの言動である。

 問題の試合から、2週間あまりが過ぎている。日大、およびアメフト部は会見を開いていない。会見で配布された「本日の記者会見の趣旨と、開くに至った経緯」によると、「大学の対応が遅いこと、部としての事情の聞き取りの予定がないことから、記者会見を決意」したと記されている。

 宮川選手はなぜ違反タックルをしたのか、その状況を真摯に説明した。「やる気がない」として、定期戦の3日前に練習から外されたこと。コーチから、試合出場と引き換えに「相手を潰せ」と言われたこと。定期戦の当日、試合のメンバー表に名前はなく、監督に「相手のQBを潰しにいくんで使ってください」と伝えたこと......。

 監督、コーチから突然、プレッシャーをかけられ始め、宮川選手は精神的に追いつめられて悩んでいた。問題の核心。なぜ、悪質プレーの指示を拒否しなかったのか。「あの時、あなたに違反行為をしないという選択肢は?」と質問されると、「なかった」と答えた。

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