ライバル選手がチームを組む難しさ。世界卓球で見えた日本男子の課題 (3ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by Chiba Itaru/AFLO

なぜ、水谷と張本の"Wエース"は機能しなかったのか

 チームワークによって個々の能力を高めることができなければ、世界選手権の団体戦では勝ち上がることはできない――。

 第1試合でフルゲームの末に鄭栄植(チェン・ヨンスク)に敗れた張本も、1-2と後がない展開で迎えた第4試合で、その鄭栄植にストレートで完敗した水谷も、心の深い部分でそのことを痛感したのではないだろうか。

 戦型の相性の悪さに加え、大会前に腰を痛めた水谷のコンディションは万全ではなかった。それでも本来の水谷なら、あるいは個人戦ならば、百戦錬磨のエースがまったく見せ場を作れないまま終わることはなかっただろう。

 水谷は「相手が気持ちで向かってきて、自分は受け身になってしまった。最初から強気で攻めていけば、もっと相手にプレッシャーをかけられたと思う」とも語った。「卓球は攻める気持ちがないと勝てない競技」と言い続けてきた彼が、なぜ、世界選手権のコートで受け身になってしまったのか。

 銀メダルを獲得した前回のマレーシア大会は、水谷という絶対的なエースを他の選手たちがサポートする形で日本のチームワークが成り立っていた。それに比べて今大会は、張本というセンセーショナルな戦力が新たに加わったことによって、チームの軸とその求心力がぼやけてしまった印象は否めない。張本の加入は水谷の負担を軽くすると思われたが、期待したような"連携"が生まれなかった根源的な理由を、日本チームは考察しなければいけない。

 日本とは対照的にチームとしての力を発揮したのが、地元開催の世界選手権で17年ぶりの銅メダルを獲得したスウェーデンである。

 現在の男子スウェーデン代表には、1990年代に活躍したヨルゲン・パーソンやヤン=オベ・ワルドナーといった、時代に名を刻んだスーパースターの系譜を継ぐ選手がいるわけではない。それでも地元の声援を背に、1次リーグで強豪の香港を破って存在感を示すと、準々決勝では予選リーグで日本の前に立ちはだかったイングランドを3-0のストレートで破ったのだ。

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