2018.05.02

世界卓球で注目の15歳、長崎美柚の
折れかけた心を支えたもの

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by Chiba Itaru/AFLO


中国の次期エース候補も撃破

 村守は昨年9月、エリートアカデミーのサポートスタッフから退いた。長崎が"独り立ち"したことを確信したからだ。

「プレーから完全に迷いが消えていました。彼女の持ち味である強い両ハンドドライブを打つには、速いスイングスピードが必要です。迷いがあれば打てないドライブを打てるようになっていた。今度こそ、"だたのおばさん"の役割は終わったと思いました(笑)」

 恩師の見立てどおり、その後の長崎は明らかに一段上のステージに駆け上がっていく。

 その年の11月にイタリアで開催された2017年世界ジュニア卓球選手権で、加藤美優(日本ペイントホールディングス)と組んだ女子ダブルスで銅メダルを獲得。そして、加藤、木原美悠(エリートアカデミー)とチームを組んだ団体戦では決勝に進出し、中国には敗れたものの、前年の世界ジュニア女王である石洵瑶(シ・シュンシャオ)を下す殊勲の星を挙げたのだ。

「打倒中国を実現する選手を求めている。中国選手を倒す実力がつけば、必然と代表になれる」と公言してきた馬場美香・日本女子代表監督は、この勝利で世界ランキングとは関係なく、サウスポーの大器を今回の世界卓球代表の候補リストに入れたのではないか。

 さらに、今年1月の全日本選手権の女子ジュニアの部(高校2年以下)では、勝負強さも証明した。

 準々決勝から2試合連続でゲームオールの接戦を勝ち抜くと、決勝でも塩見真希(四天王寺高)の堅い守りに両ハンドドライブのミスが続き、2ゲームを連取されてしまう。後のない状態で第3ゲームを迎える直前、ベンチからコートに戻る長崎の背中に、観客席の一角に陣取った岸田クラブの"チーム美柚"から大きな声が飛んだ。

「美柚、試合はここからだよ」

 声で愛弟子の背中を押した村守が「久しぶりに美柚のスイッチが入る瞬間を見た」と振り返る試合は、第3ゲーム以降を長崎が支配。2-2のタイに持ち込むと、最終ゲームも10-8でチャンピオンシップを握り、最後は塩見のサービスを強烈なレシーブドライブで狙い打ち、歓喜のガッツポーズを見せた。