世界卓球で「サプライズ選出」。15歳の美少女・長﨑美柚とは何者か (2ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by AFLO SPORT

 どんな分野でも、才能が刻む第一歩は周囲を驚かせる。

「ちょっとした身のこなしを見ているだけで運動神経がいいのがわかりました。体も大きかったし、その体がゴム鞠のように弾んでいました」

 そう振り返るのは、岸田クラブでコーチを務める村守ひとみである。

「どんなスポーツをやっても、一流になれる資質を持ってる子だと思いました。笑われるかもしれませんが、この子が順調に成長すれば、中国のトップ選手たちとも対等に戦える選手になるんじゃないか。そんな未来まで想像してしまいました」

 村守は自身を「ただのおばさん」と謙遜するが、熱心な卓球ファンなら、その名にピンとくる人もいるだろう。低迷していた日本の男子卓球界の救世主となった水谷隼や岸川聖也が、中学時代に日本を離れてドイツで腕を磨いたことはよく知られているが、彼らと同じ時期にドイツで寝食をともにした村守実の母である。村守は岸川とダブルスを組み、2003年の世界ジュニア選手権で金メダルを獲得する実績も残した。

「私も息子たちを通じて卓球の厳しさを知りましたが、その厳しさがわかっていても、美柚には夢を抱かせてくれる潜在能力がありました。私や岸田代表、普段から一緒に練習している卓球が大好きなメンバーたちにとって、彼女の存在が大きな希望になったんです。みんなが自分たちの経験で培ったいろんなことを美柚のために注ぎ込む日々が始まりました。いってみれば、"チーム美柚"ですね」

 もともと右ききだった女の子は、大好きな祖母を真似て左手でラケットを握った。ボールを打ち始めると、周囲の期待に違(たが)わないセンスで必要な技術を身につけていく。

「勝負に勝つことが大好きな子でした。基本練習はあまり熱心ではなく、実戦形式の練習になると、目の色を変えて取り組んでいました」と岸田は振り返るが、特筆すべきは、チーム美柚が卓球を始めたばかりの少女にボールの回転を常に意識させていたことである。

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