みま、みう、1年後の全日本での明暗。
2人の卓球の何が変わったのか

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  中村博之●写真 photo by Nakamura hiroyuki/PICSPORT

 ラリーで絶対的な自信を持つ石川にダメージを与えたのは、4ゲーム目6オールからポイントを奪ったシーンだ。長いラリーを続け、体勢を崩されても相手の厳しいところに打ち返す、伊藤の技術の高さとフィジカルの強さが表れたプレーだった。

 伊藤はもともとサーブ&レシーブが持ち味だったが、このシーンに象徴されるようにラリーでも打ち負けない強さとフィジカルを身につけていた。

 また、今大会はミックスダブルス、ダブルスに出場し、いずれも決勝まで戦い、優勝している。さらにシングルスの試合もあったので疲労はかなりあっただろうし、足が重い日も実際にあったというが、どの試合もそんな素振りは一切も見せないタフさがあった。今の伊藤の強さを支えるフィジカルを強化し始めたのは昨年からだという。

 昨年の全日本に負けて以降、伊藤はツアーで1回戦、2回戦負けが続いた。松﨑コーチはリオ五輪で団体銅メダルを獲得して以降、卓球に集中し切れていないのを感じていた。気になったのは試合に負けたことではなく、同じミスを繰り返して負けたのにもかかわらず、練習して修正しようとしない姿勢だった。

「そこについては厳しく話をしました。リオ五輪以降、モチベーションが上がらず、練習に取り組む姿勢というか集中力がなかなか上がってこなかった。昨年全日本で優勝した平野選手、石川選手、早田(ひな)選手が頑張っているのに美誠は何やってんだという感じになっていました」

 伊藤も悩んでいた。

「リオ五輪が終わって、1年間はよくない時期が続いて、それは自分の卓球人生で初めてでした。相手には向かってこられるし、自分はプレッシャーとか考えていないつもりだったんですけど、自分のなかでは感じてしまって試合をするのが怖くなってしまった。ツアーに出ても1回戦負けとかで、自分が変わらないと勝てないと思ったんです」

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