エース平野美宇も「返り討ち」に。卓球王国・中国の背中はまだ遠い (4ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nakamura hiroyuki/PICSPORT

 1回戦で石川佳純(同6位)を1-4で破った若き俊英に対して、伊藤は飛び跳ねるようにして力強いショットを次々と決め、第1ゲームを11-4、第2ゲームを11-8と、2ゲームを連取。しかし、相手がサーブを変えたり、左右に振ってきたりするようになると、徐々にミスが増えていく。粘ったものの第3ゲームを11-13、第4ゲームを10-12で落とすと、そのまま振り切られて2-4の逆転負けを喫した。

 悔しさを押し殺して淡々と試合を振り返った平野とは対象的に、伊藤は試合後、悔し涙を覗かせた。言葉を絞り出すようにして、伊藤が語る。

「もったいなかったなって......。ここまでできて負けるっていうことは、本当に実力不足だと思いました」

 2-0と先行しながら逆転されたもったいなさ。4ゲームを連取されてひっくり返された不甲斐なさ......。勝負の分かれ目だったのは、第3ゲームだろう。一時は3-9と大きくリードを許しながら、10-9と逆転してゲームポイントを握る。「ここで取らないと、絶対に次、逆転される。中国選手(との試合)のパターンだな」と分かっていながら、このゲームを落として潮目が変わった。続く第4ゲームでも8-5とリードしながら、逆転を許してしまったのだ。

「サーブで何を出せばいいか、全然分からなくて......」

 第4ゲームで10-10のデュースとなった場面について、伊藤はそう明かした。次第に追い込まれていった彼女の心境が、この言葉に端的に表れていた。

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