世界卓球スタート。元女王「鬼の平野」が伝授する「卓球観戦のツボ」

  • 市來孝人●文 text by Ichiki Takato
  • photo by Akutsu Tomohiro

 現役時代は"鬼の平野"と呼ばれるほど、険しい顔つきでプレーする姿が印象的だったが、それにもちゃんとした理由があった。

「自分の心を読まれないように、わざと怖い顔をしていたんです(笑)。ただ正直なところ、意識して怖い顔をしようとはしていませんが、日本一になったつもりで堂々とプレーしようとは常に思っていました」

 世界最強と言われる中国の選手も、大舞台で普段にはない表情を見せることがあるという。試合観戦中、プレーの"合間"の表情やジェスチャーに注目することで、その選手の精神状態や戦術が見えてくるかもしれない。

相手の攻めを有効に利用しているか

 もうひとつ、平野氏が戦いのなかで意識していたことは、「相手の攻めを利用して得点につなげる」ことだ。

「試合中、1点を取りにいきたいと思っても、世界のトッププレーヤーが相手だと、私の力ではなかなか難しい。"後の先"――これは剣道用語で、相手の動きを見て差すことという意味なのですが、コーチがよく使っていたのは"後手先"という言葉でした。私なりの解釈は、相手のやりたいことをあえてやらせて、そこから攻めるということです。相手が待っているコースにわざと打つのですが、実は難しいボールを打つんです。相手が『待ってました!』と決めにきたらしめたもの。そんな形で得点につなげることもありました」

 一見、相手ペースで進んでいるように思わせながら、したたかに制す。こういった駆け引きにも注目して観戦すると、新たな発見もあって面白いだろう。

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