世界卓球スタート。元女王「鬼の平野」が伝授する「卓球観戦のツボ」

  • 市來孝人●文 text by Ichiki Takato
  • photo by Akutsu Tomohiro

 そこで重要だったのが卓球というスポーツの特性だ。(卓球台の全長)2m74cmしかない相手との距離。これだけ近い距離だからこそ、"素(す)振り""頷(うなず)き""振り返り"など、わずかな仕草の変化を観察してきたという。

「失点をしたときに、選手が素振りをしているシーンを見たことがあると思います。これは反省をしながら、頭のなかで確認作業をしているのですが、無意識に次のプレーの動作が出てしまっているんです。そこから相手の打ち方を想像し、対策を練っていました。たとえば、フォアハンドで素振りをしているなら、フォアハンドで打ちにくいコースに攻める。素振りやラケットの角度、振り出す方向を見て、相手の攻めを予想していました」

"頷き"と"振り返り"については、次のように説明した。

「選手が頷くのは、『これでいい』と思ったり、自分の不安を隠すためだったり、様々なシチュエーションがあります。また、ベンチを振り返るのは、アドバイスがほしいときに多く、不安の現れのひとつとも言えます。それらの仕草を見て、弱気な姿勢が見えたときには一気呵成に攻めていました」

 このように、プレーの合間に相手を観察するようになった理由について、平野氏は次のように語った。

「中学や高校のときから、同世代には世界のトップになれるだろうなという選手がたくさんいました。そのなかで戦おうと思ったときに、相手を崩すことにすごく意識が向くようになりました。選手によってはまったく表情を変えない人もいますが、それでも無意識のうちにちょっとした仕草が出たりします。目線が上にいったり、点を見つめたり......。実際、私も自分を落ち着かせるために天を仰ぐクセがありました(笑)」

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