平野美宇が全日本卓球で優勝。「女子16歳トリオ」の明暗を分けたもの (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by YOSHIMURA Kanami /PHOTO KISHIMOTO


 平野は石川に対して、スピードもパワーも負けることがなかった。

 ウエイトトレーニングで足腰や体幹が強化されたので、早い打点で打ち込むボールにパワーが宿り、スピードも増した。すると技術の精度も増した。もともと安定感のあるバックサイドもスピードを増して、正確に厳しいコースをつけるようになった。それは石川の度胆を抜くもので試合中、何度も「あり得ない」という表情をしていたのが印象的だった。

 そして、石川を迷いの淵に追いやったのが、定石を覆す戦術だ。

 第1ゲームから石川のサーブをそのままレシーブスマッシュする。相手は何をやってくるんだろうと思わせることは心理戦において、極めて優位に立つことができる。石川を迷わせ、混乱させたのも今回の勝因のひとつだった。

「リオ五輪では出場できず、悔しかった。何度も涙が出そうになったけど我慢した。東京五輪は自分が出たいと思ったので、そのために石川さんを倒して優勝したかった。有言実行できてよかったです」

 平野は大会で初めて涙を流して、そういった。

"石川を倒して優勝する"

 大会中、ずっと言い続けてきたことを本当にやってのけた。伊藤も早田も狙っていたが、届かなかった。

 東京五輪へのレースは、まだ始まったばかりだが、そのトップランナーが「平野美宇」であることを彼女は今回の優勝で証明したのだ。

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