平野美宇が全日本卓球で優勝。「女子16歳トリオ」の明暗を分けたもの (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by YOSHIMURA Kanami /PHOTO KISHIMOTO


 平野美宇は、ずっと好調だった。

 5、6回戦はいずれもストレート勝ち。「こんなことなかったので、うれしいです」と表情を綻(ほころ)ばせた。準々決勝では「松澤(茉里奈)さんとは今回で3年連続(の対決)、これまで2回勝っているので2度あることは3度ある。今日も勝てると思った」というスーパーポジティブな気持ちで臨み、その通り結果を出した。準決勝の対戦相手である橋本帆乃香は昨年、同大会ジュニアの部で負けていたが、今回はストレートで退けた。

 石川とは昨年、決勝で対戦し、敗れていた。

 あれから1年、自分がどのくらい成長したのか。それを証明し、東京五輪に向けて自らが日本のトップに立つ目標を達成するには乗り越えないといけない相手だった。

 決勝戦の平野は、恐ろしく積極的で攻撃的だった。第1ゲームから出力全開で高速ラリーでも堂々と打ち勝ち、石川の鉄の平常心を揺さぶる。16歳ながら心臓に毛が生えたような冷静さと力強さで女王を追い詰めていった。

「1年前と比較して自信がついているように思えましたし、スピードアップしていました。何をやっても入るんだなぁ。すごいと思っていました」
 
 石川は平野の強さをそう分析した。自信――リオ五輪以降、平野はワールドカップで優勝。中国リーグに参戦し、3勝するなど中国人に勝てるようになり、ワールドツアーグランドファイナルでベスト4になった。国際試合の経験と勝利体験が平野の卓球に自信を与えた。

 その自信がメンタルを整えた。第5ゲーム、8-2の大量リードから逆転されて失っても動じる気配はなく、表情はまったく変わらない。さっと気持ちを切り替えて、逆に石川に圧力をかけていった。表情はまだ少女の面影を残すが気が強く、物事に動じない。このメンタルの強さこそ、同学年の伊藤と早田に欠けていたものだったような気がする。

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