卓球・丹羽孝希「リオの銀メダルが思ったより嬉しくなかった理由」 (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro  露木聡子●写真 photo by Tsuyuki Satoko

 
 第1試合、丹羽はシングルスで金メダルを獲得した馬龍に敗れる。しかし、続く第2試合、水谷が世界ランク3位の許昕を破り1−1のタイに。
 
 第3試合のダブルスに挑む丹羽は、吉村に「絶対に勝つ。金メダル取れる」と声を掛け合い試合に臨んだという。

「ダブルスで勝てば、2−1。そうすれば、最後は水谷さんが絶対に勝ってくれる。だから、このダブルスで勝ったら金メダルだって。なかなか中国相手に『勝ちに行こう』って思えることはないんです。ただ今回は、本当に本気で勝ちにいった。1−1で迎えた第3ゲーム、9--7でリードしたのに......。あそこで、あと2点取れていたら、金メダルだったかもしれない」

 団体での銀メダル獲得が、日本男子卓球史上初だったことも、不敗の王国・中国の背中に手をかけたことも偉業に違いない。それでも、丹波は銀色に輝くメダルを手にしても、「思ったより嬉しくなかったです」と語る。それには理由がある。

「もちろんメダルが取れた嬉しさが一番大きいです。でも、複雑な気持ちもあって。今回は水谷さんが頑張っただけで、僕と吉村くんは浮かれる立場じゃないんじゃないかなって。僕自身、団体のダブルスでは2度勝ったんですけど、シングルスは3連敗。とても浮かれてられない。メダルを取ったと言うよりも、取らせてもらったって感じが強いんです。だからでしょうね。メダル取ったら、思ったより嬉しくなかったのは。もっと嬉しいと思ったんですけどね」
 
 ただし、"取らせてもらった"という悔しさは今、丹羽の背中を押している。

「おかげで、また東京を目指して頑張ろうって思えました」

 すでにリオは過去だ。賞賛に酔いしれる時間も、悔しがっている時間も終わった。すべては4年後のためにーー。

(つづく)

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