卓球日本男子がとらえた中国の背中。「4年後の金も夢じゃない」 (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by JMPA

 試合終了の瞬間、馬龍は両手を広げ、「どんなもんだい」というような表情で日本選手をにらみつけた。派手なガッツポーズがなかったところに、彼も必死だったことがうかがえた。

 前日の女子バスケットの米国代表のように、卓球大国・中国の戦いぶりは余裕のある横綱相撲だったのだろうか。いや、違うだろう。シングルスを制した馬龍がいちばん苦しんだ相手は準決勝で戦った水谷であり、団体戦でもその水谷に1敗を喫してしまった。急速に日本が力を付けていることを中国は改めて思い知ったはずである。それゆえに、ダブルスからは目の色を変え、死にものぐるいでボールと一緒に気迫もテーブルにぶつけてきた。

卓球男子団体でこれまで一度も勝利したことのない許昕を破った水谷隼卓球男子団体でこれまで一度も勝利したことのない許昕を破った水谷隼 もはや日本は、金星を狙う幕内力士ではなく、横綱の背中を追う関脇・大関クラスの強国となったのではないだろうか。倉嶋監督は言う。

「中国から離れて団子状態だった勢力図が、頭ひとつ分だけ、日本は抜け出せたかもしれない。ただ、水谷のような選手があとひとり、ふたり出てこないと、4年後、東京五輪で中国に勝利することは難しいと思います」

 エースの水谷は、日本選手として初めてシングルスでメダル(銅)を獲得し、団体戦ではチームを牽引して銀メダルに導いた。シングルスからの活躍で水谷に対する注目度と人気が、日本で高まっていると聞く。

「それはすごくモチベーションになりましたね。すばらしいパフォーマンスをみせて、日本中を熱くさせようと......途中からはそのために頑張っていた。自分の結果よりもとにかく最高のパフォーマンスをして、卓球の魅力を伝えたかった」(水谷)

 最後は「東京で日本が中国を倒すのも夢じゃない」と、リオで得た手応えを口にした。

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