【卓球】松下浩二のリオ展望「水谷隼は世界王者になれる才能」 (4ページ目)

  • 水野光博●構成 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by AFLO

 また、ご存じの方も多いかもしれませんが、彼は感情をあまり表に出さない珍しいタイプの選手です。ある意味、クールというか、何も考えていないようにも見えます。先ほど言ったように、負けるときは簡単に負ける。それでいて、悔しそうな顔ひとつせず、相手選手と握手して無表情のままスタスタと帰ってくる。すると翌日、ウチの会社には、「もっと声を出すべき!」「最後まであきらめないでプレーすべき!」と苦情の電話がくるんです(笑)。

 もちろん、彼はやる気はありますし、勝ちたい気持ちもあります。ああ見えて、まだまだ若い(21歳)こともあり、批判を受けると、「もう少し変えたほうがいいんでしょうか......」と悩み、私に相談してきたこともありました。しかし僕は、「君は君だよ。あんまり考えないほうがいい」と言っています。だって、自分のスタイルを変えて試合に負けたとして、それで「頑張ったね!」と言われても、気持ちは晴れませんよね。

 勝負の世界ですから、勝つことがすべて――。何を言われても、勝てばいい。極端な話、やる気なんてなくても勝てばいいんです。何が一番大事かというと、「自分が勝つ方向を向いているかどうか」ということ。声を出して勝てるなら出せばいいし、出さないほうがいいパフォーマンスを発揮できるなら出さなくていい。彼には彼のやり方がある。

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