【ハンドボール】土井杏利「猛練習で失神。救急車で運ばれました」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 洞澤佐智子●写真 photo by Horasawa Sachiko

 目を覚ますと病院のベッドで寝ており、なんで自分がこんなところにいるのか、まったくわからなかった。翌日、少し回復した土井にナ-スがほほ笑みかけた。

「きみ、日体大よね。日体大生、よくここに来るのよ」
 
 たしかに夏の間、何回か校内に入ってくる救急車のサイレンを聞いていた。救急車搬送は決してめずらしいことではないが、まさか自分が倒れるとは思ってもみなかった。

「体力だけは自信あったんですけどね」

 夏合宿の練習は、午前中だけではない。正午ごろに終わると寮に戻り、昼ご飯を食べてそのまま寝た。そうしないと体がもたないからだ。午後の練習は午後4時から午後7時半、長い日は午後8時を過ぎる時もあった。1日の練習が終わると最初の頃は、両足が悲鳴を上げ、階段が上がれず、壁をつたって歩いていた。手の指は(すべり止めのために付ける)松脂(まつやに)のせいで皮が剥け、あまりにも痛いので風呂に入ると片手で髪の毛を洗っていたという。

「夏、松脂はドロドロでくっつきがよくなるんです。でも、ボ-ルを投げた瞬間、指の皮ごともっていかれるんですよ。それがめちゃくちゃ痛い。毎日、剥けていると次第に硬くなって剥けなくなるんですけどね。
 午後の練習が終わるとフリ-ですが、疲れてほとんど出歩かなかった。たまに休みもあるけど、半日だけ。まぁ夏合宿は昭和時代のシゴキって感じだったけど、それに耐えて乗り越えることができたのは同期の仲間がいたから。仲間の結束力は半端なかったですね」

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