【ハンドボール】土井杏利「猛練習で失神。救急車で運ばれました」

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 洞澤佐智子●写真 photo by Horasawa Sachiko

「走り」の練習が終わると、すぐにハンドボ-ルの実戦練習に入る。ここで1、2年生は肉体的苦痛から一時的に解放される。上級生が飲む水を用意したり、声を出したり、ボ-ルを拾ったり、雑務が仕事になるからだ。さらに追い込まれるのは、レギュラ-のAチ-ムの選手たちだった。

「うちは堅守速攻のチ-ムなんで、練習ではまずAチ-ムがゴ-ルを守り、Bチ-ムからボ-ルを奪うと速攻でゴ-ルを決め、また守備に戻って笛が鳴るまで守るんです。それが完璧にできないと交代できないし、何回かミスが続くと罰走です。これを2時間近くやるんで、めちゃくちゃキツかった」
 
 ハ-ドな練習には理由があった――日体大のハンドボ-ルは60分の試合中、残り10分間でどれだけ他大学と違いを見せられるかに重きを置いている。50分間、相手がいい試合をしても残り10分間で走って試合を引っくり返す。そのための練習なので軍隊のように激烈だったのだ。土井は大学3年の夏合宿中、疲労と脱水症状で気を失って救急車で病院に搬送されたという。

「A、Bチ-ムに分かれて3試合を戦い、肉体的に限界で、時間的にもそろそろ終わりだなって思っていたら最後、Bチ-ムに負けたんです。Aチ-ムは負けたら罰走で健志台の外周の起伏の激しいコ-スを3周させられるんです。もう疲れてヘロヘロだから歩いているおばあちゃんにも抜かれた(笑)。ようやく走り終えて『これで終わりだろ』って思ったら監督が『もう1試合やるぞ』って。そこからは、もう記憶がないんです。その時、ビデオを撮影していて後で見たんですけど、明らかに僕の動きがおかしい。プレ-中、1回コートに倒れたんですけど無意識に立ち上がって、またプレ-しようとしていたんです。その時、みんなにヤバイって止められて、また意識を失って救急車に運ばれたらしいです」

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