スカッシュ・松井千夏、号泣。「実らなかった五輪への思い」 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●文 text&photo by Saito Kenji

 大学卒業後はプロ選手に転向し、2001年には当時最年少の24歳で日本選手権を制覇。一気に日本のトップ選手へと登り詰つめた。またその後は、バドミントンの「オグシオ」や、ビーチバレーの浅尾美和、卓球の四元奈生美らとともに、強さと美しさを兼ね備えたアスリートとしてメディアに注目され、スカッシュの顔として、文字どおり、コート内外で10年以上体を張ってこの競技をアピールし続けてきた。

 スカッシュといえば「松井千夏」と言われる存在となり、36歳となった今でも、マイナー競技のアイコンとして、愛くるしい笑顔でスカッシュの魅力をアピールしてきた。

「スカッシュはラケットスポーツですが、ネットを挟まない競技であることが特徴で、立体的な4面の壁の中で行ないます。体だけでなく頭を使って、相手がいないところにボールを運び、得点を決められたときが楽しい! また日本にも向いていると思います。コートは狭いですし、忙しくても、短時間ですぐに汗をかくことができて気持ちいいスポーツです。興味がある人はぜひやってみてください!」

 競技を始めて18年目、日本王者になること4回。若手の小林海咲らの台頭があっても、トップとして戦い続けている松井が長年言い続けている言葉が、「オリンピックに出たい!」だった。

「海外で練習し、大会に出たりしてきましたが、唯一出場したことのない大会がオリンピックです。3度目の挑戦ということでオリンピック競技になってほしいという気持ちが強いです。何とか、最後に経験したことのない舞台に立ちたいです!」

 2020年には、43歳になる松井。「(現在42歳の)クルム伊達公子さんの活躍は刺激になります。スカッシュ界の"クルム伊達"になりたい」という強い決意のもと、もしオリンピック競技となれば、レッスンやPR活動を減らして、競技に集中する意向を持っていた。そんな彼女の気持ちを後押しするかのように、スカッシュも3度目の挑戦に対して本腰を入れた。

 かつてはサーブ権がなければ得点できなかったが、試合時間をテレビ観戦に適する長さに短縮する狙いで、ラリーポイント制(11点3ゲーム先取)を導入。さらに壁を4面ガラス張りにしたコートを世界各地に作り、そこで国際大会などを行なうことで「見るスポーツ」としての認知を高めようとしてきた。そのうえで、スイス・ローザンヌに国際連盟の本拠地を置き、ヨーロッパを中心にロビー活動を展開。メディアに対しても、早くからプレゼンテーション映像を作ってアピールしてきた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る