【ゴールボール女子】「チーム力」で勝ち取った初めての金メダル (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

 ここからは日本の守備力が光った。前半残り2分を切ったところで、守備の要、浦田理恵が反則を取られ、たったひとりで守る「ペナルティースロー」が相手に与えられた。絶対的なピンチだったが、相手が投げ込んだボールを浦田はピタリと止めた。

 浦田は振り返る。「私は守備には絶対の自信がある。前半4分で先制してくれたから楽でした。あとは、私が役目をしっかり果たすからって。ペナルティースローのときは、『取ればいいんでしょ』と開き直り。練習でやってきたように、鈴の音でボールの位置を聞き分け、待ち構えたところにボールが、『来た!』という感じでした」

 1点リードで迎えた後半も集中力を切らすことなく、選手同士が声を出しながらボールの位置を確かめ、カバーしあい、貴重な1点を守り切った。

 表彰台で君が代を口ずさみながら、「感無量で胸が詰まった」と話した小宮正江は、控え選手も入れたメンバー6人の中で唯一、アテネ大会からの連続出場選手。アテネで銅メダルを獲得したのち、それ以上を目指した北京で7位に終わった。悔しさをバネに、苦しい練習にも耐えてきた。

「あのとき、北京の聖火台の前に立って、『絶対に取り返す』と誓ったことが、今日実現できて本当によかった。ひとりの力では絶対に獲れなかった金メダル。『みんなにありがとう』の気持ちです」

 ゴールボールは鈴の音と相手の足音だけが頼りのため、観客にはプレイ中、静かに見守ることが求められる。日本の勝利を告げる試合終了のブザーが鳴った瞬間、両手を突き上げた「チームジャパン」の選手たちを、それまでのうっぷんを払うかのように、ウォーっという歓声と地響きが包んだ。

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