男子バスケ日本代表で「想像以上」の成長を遂げた3人。八村塁や渡邊雄太を入れてどこまでレベルアップできるか

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 この夏が始まる前には想像できなかった若手選手が躍動し、男子バスケットボール日本代表が成長を遂げている。

この夏の連戦で躍進したうちのひとりである河村勇輝この夏の連戦で躍進したうちのひとりである河村勇輝 昨年11月、W杯予選で中国に惨敗したところからスタートしたトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)率いる男子バスケ代表。シーズンオフである夏の間に精力的に合宿を行ない、W杯予選で4試合、アジアカップで5試合、国際強化試合のイラン戦で2試合、計11試合もの真剣勝負をこなしたことで、チームが機能し始めている。8月30日、W杯予選のカザフスタン戦を前に、ホーバスHCは手応えをこう語っている。

「最初はどうなるかと思ったけど、今は思ったよりもチーム力が上がってきている。日本が戦うべき道が見えてきました」

 東京五輪で女子を銀メダルに導いたホーバスHCは、女子同様にサイズのない男子に対しても『スモールボール』の戦術でチーム作りを進めている。全員が5アウトから攻めて3ポイントを主体とする戦い方である。そのためにはいいスペーシングを作り出すことが必要で、ペイントアタックの2点と3ポイントのバランスを構築しているところだ。

 そんななかで、この戦術を理解しホーバスHCにとっても「想像以上」と言うほどの成長曲線を描いてプレータイムを得たのが、6月にディベロップメントキャンプ(育成合宿)から日本代表に引き上げられた吉井裕鷹(196cm/24歳/アルバルク東京)、井上宗一郎(201㎝/23歳/サンロッカーズ渋谷)、河村勇輝(172㎝/21歳/横浜ビー・コルセアーズ)ら3人だ。

 今夏の代表活動に参加したNBAプレーヤーの渡邊雄太が、「今の日本代表はメンバーに決まっている選手がひとりもいないほど若手が成長している」と口にするほどの競争の激しさだ。

 吉井裕鷹は昨シーズンの終盤にインサイドの負傷者によってチャンスをつかんで頭角を現してきた選手。クォーターファイナルの島根スサノオマジック戦では、持ち前のフィジカルの強さを発揮してインサイドでタフに守り、3ポイントのシュート力も発揮。日本代表でも各国のセンター陣に対してコンタクトを厭(いと)わないディフェンスで粘りを見せている。
 
 大阪学院大高時代はU19W杯の候補に選出されていたものの、全国的には知る人ぞ知る選手でポテンシャルが先行していた。大阪学院大では、早くも1年次の春先から学生代表に抜擢され、韓国遠征等で力をつけていくことになる。当時のヘッドコーチである比嘉靖氏は「吉井は体の強さもシュート力もあるので将来は絶対に台頭しますよ」と全国的には無名の逸材に対して期待の言葉を惜しまなかったほどだ。

 しかし、当時の吉井はインタビューをしても、考えがまとまらずに言葉がまったく出てこないような選手だった。今も言葉を吟味して話すことは変わらないが、言葉の端々には強い意志を感じられるようになった。当時と変わったのは「経験と自信」だと吉井は話す。

「最初に学生代表に選ばれたときは何もできませんでしたが、そこから継続して経験を積み上げていきました。それはアルバルクに入ってからも同じで、試合に出られない時も練習では外国籍選手に対して、自分が得意とするぶつかり合いで守れるようになっていました。だから、あとはその自信を試合で出すだけでした。失敗してもやり続けてきた経験が自分の核になっているので、まだまだではありますが、今は根拠のある自信が沸いてきています」

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