NBAの新潮流「インサイドだけのビッグマンは生き残れない」。名将も「ミスマッチを狙う戦術が増えてきた」と証言 (3ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

一番重宝されている選手は?

 ピック&ロールを使った攻撃が増え、相手のディフェンスをスイッチさせてミスマッチを作る戦法も、ビッグマンのサイズを消すのに有効な手段だ。1対1で敏捷なガードを守ることができるビッグマンは、そう多くない。ドリブルやフェイクで翻弄され、ドライブインを警戒して下がると、3ポイントを決められる。外に引っ張り出されることで、ゴール下を守れなくなるというデメリットもある。

 ウォリアーズのスティーブ・カーHCによると、ミスマッチを狙うような攻撃が主流になってきたのは、この5〜6年のことだという。

「8年前、私が最初にコーチし始めた頃は、こんなにミスマッチを狙うことはなかった。この5〜6年でかなり増えてきたと思う。3ポイントシューターが増えて、5アウト(5人全員が外から攻める戦術)のラインナップが増えて、フロアが広く空くようになってきたからだ。

 あと、スイッチディフェンスも多くなった。スイッチに対して攻めるのは(ミスマッチを作らないかぎり)簡単ではない。そういったことが全部、この数年、ミスマッチを狙うことが増えた理由だと思う」

 時代とともに戦術が変化し、試合を支配する選手のタイプも変化していく。一昔前までは不利だったことも、やり方によっては有利に変えることができるし、サイズの価値やポジションの定義など、当たり前だったことも、当たり前ではなくなっていく。

 そんななか、今NBAで一番重宝されているのは、2メートル前後で、外も中もできるオールラウンド選手だ。ケビン・デュラント(208cm)やヨキッチの前にMVPだったヤニス・アデトクンボ(211cm)のように、サイズで言えばビッグマンだが、ガードのようなスキルを備えたスーパースターたちが年々増えてきている。

 そう考えると『ビッグマン時代の到来』という編集者の指摘は、あながち間違っていなかったのかもしれない。旧来型のビッグマンではなく、『新ビッグマン』たちの時代の到来だ。

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